米連邦通信委員会（FCC）は32州の農村部や供給不足地域にブロードバンド展開を進めるための資金援助枠を拡大し、その額は12億ドルを超えた。

FCCによれば、地方のブロードバンドのための過去最大の資金援助になるという。昨年成立した1兆2000億ドルのインフラ投資・雇用促進法を受け、米国ではブロードバンドインフラ整備への公費投入を加速度的に拡大しているためだ。

同法には、画期的なことに、インターネット未接続の地域や接続サービスが不足している地域に高速インターネットを提供、情報格差を解消するための資金として650億ドルが盛り込まれている。

FCC、32州で23の事業者に資金を提供

FCCによると、新規展開に割り当てられる資金提供としては6回目となり、これまでの総額は40億ドルに達するという。また、落札者に選ばれたブロードバンド事業者23社によって100万ヶ所以上にブロードバンドサービスが提供されることとなった。

「（12億ドルの資金が承認されたことで）消費者にこれまでよりも多くの接続が提供されるようになります。本当に必要な地域に確実に資金が渡るよう、私たちは継続して取り組んで参ります」。FCC議長のJessica Rosenworcel氏はステートメントで述べている。

ブロードバンドインフラに650億ドルという大規模な投資が行われることで、米国の通信市場が劇的に変化する可能性もある。明らかに恩恵を受けるのは、現在はサービス提供が乏しくブロードバンドを利用できない、あるいは利用する金銭的余裕のない地域だ。

一方で、通信ネットワーク事業者、機器サプライヤー、ベンダー、自治体にとっては今回の展開・資金投下は今後10年間の自分たちの立ち位置を変えかねないもので、そのペースがどのようなものかに強い関心を寄せている。

米ガートナーのシニアリサーチディレクター、Susan Welsh de Grimaldo氏は、インフラ法案の可決に先立ち、「ブロードバンド事業者にしてみれば、資金提供があるのなら費用対効果の評価が変わります。現在ブロードバンドサービス提供のない、あるいは乏しい地域でカバレッジを広げることが収益面で理にかなうケースが増えるのです」と話している。

実際、12億ドルを投じて100万ヵ所にブロードバンドを提供するとなると、米国の納税者は1接続あたり1,200ドルを前払いするということになる。

通信事業者の経済性は一変

米国には広範囲の不感地帯が点在する広大な土地があり、最も裕福な地域の一部もそこに含まれている。インフラ法案によって割り当てられた資金はこの問題の解決に焦点を絞り、既存の連邦プログラムよりも網羅的に取り組むために使われるという。データ分析の英GlobalDataでサービスディレクターを務めるJohn Byrne氏が当時説明している。

「これまで供給の乏しかった地域でもブロードバンド展開が加速するでしょう。有力事業者の一角が事実上独占しているような地域でも、有意義な競争が生まれることも考えられます」と氏。

また、FCCは「Rural Broadband Accountability Plan」（地方ブロードバンドアカウンタビリティ計画）を発表、監査・検証プロセスを強化した。2022年は監査・検証の回数を2021年比で倍増させるとともに、巨額の資金を受け取る受給者には少なくとも1つの州で実地監査を受けることを義務付けるという。

こうした検証や監査、速度やレイテンシといったパフォーマンステストの結果はオンラインで一般公開もする予定だという。これは初の試みだ。「このプログラムで資金を提供する事業者が確実に仕事を遂行するよう保証する仕組みのひとつです」とRosenworcel氏は述べている。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/fcc-unleashes-1-2b-for-rural-broadband-deployments/2022/02/