通信大手各社は、5Gネットワークへの投資に対し今度は財務的リターンを得ようとするなか、2023年を不安定な財務状況で終えようとしている。その結果、ベンダーのエコシステムにも重圧がかかっている。こうしたベンダーのうち少なくとも1社は、デジタル変革の取り組みにさらに注力することで、この課題を軽減できると考えている。

調査会社IDC最近のレポートでは、2027年に世界中のデジタル変革の取り組みに3兆9,000億ドルが費やされると予測している。しかし、各調査担当地域での支出ドライバーとして通信事業者を挙げたのは、同社のヨーロッパのアナリストだけだった。

Dell Technologiesの通信システム事業を率いるDennis Hoffman（デニス・ホフマン）氏は、こうした課題があることに同意。通信業界はデジタル変革の旅をより危険なものにする多くの独自の課題に直面していると指摘した。

「通信業界が他と大きく異なるのは、あらゆる変革への取り組みにリスクが伴うということでしょう。非常にもっともな理由から、世界で最もリスクを回避する業界の1つになっています」と氏はSDxCentalのインタビューで語った。「彼らは、稼働し続けること、信頼性を確保することに対して法律で責任を負っています」

通信事業者各社は、デジタル変革の取り組みにおいて、規制がより緩やかな業界に比べて遅れを取っているとみなされる理由として、社会に対する説明責任を果たすためのこうした基準の存在を繰り返し挙げてきた。例として、米通信大手VerizonのEVP兼グローバルネットワーク／テクノロジー担当プレジデント、Joe Russo（ジョー・ルッソ）氏は最近SDxCentralに対し、同社は信頼性への懸念から5Gスタンドアロン（SA）コアの展開を控えていると語っている。

「信頼性とパフォーマンスの観点から後退にあたるテクノロジーをネットワークに導入するつもりはありません」とRusso氏は述べた。「ざっくり言えば、我々が行ったテストや、現在スタンドアロン機能を試している内容から考えて、ネットワークに投入する準備はできていないということになるでしょう」

Russo氏は、すでに確立されているVoLTE（ボルテ）ネットワークと比較して、5G Voice-over-New-Radio（VoNR）技術で音声トラフィックを処理する際の課題について特に言及した。

「正しく処理されることを確認したいので、現在多くのテストを行っています」と同氏は語った。「リリースする前に、本当にVerizonの基準を確実に満たしているかを確認しようとしています」

Hoffman氏は、こうした懸念はもっともだが、通信事業者は引き続きベンダーパートナーと協力してこれらの技術的課題の克服に取り組む必要があると指摘した。これには、次のような変化を認め、それに向けて努力することが含まれる。

「我々は変わらなければならないことを認識する時が来ています。もはや選択肢の一つではありません」と同氏は述べ、小規模事業者はこの移行が可能であることを示し始めていると付け加えた。「一部の大手通信事業者も、これをより本格的に受け入れ始めており、ここから雪だるま式に増えると思います。『これをすべて理解している業者と本当に競争したいか』という疑問が生じるためです。（中略）アーキテクチャの変更にはリスクが伴います。私は非常にリスクを嫌う業界にいますが、これまでは機会の追求はその恐怖を克服するほどの動機にはなっていませんでした。率直に言って、サプライヤーもオペレーターも同様に、基本的にはその時期が来たと判断する段階に到達していると思います」

デジタル変革のアイデアとタイミング

しかし、その変化はどのようなもので、投資のスケジュールはどうなるのだろうか。

米調査会社ABI Researchは最近のレポートで、telco（テレコム企業）がtechco（テック企業）になるために取るべき4つのステップ、つまり「生き残るために」必要なステップを示している。大まかには、5GaaS（5G as a Service）の採用、業界ごとのエコシステムへの投資、ネットワーク管理のデジタル化、セルラーイノベーションへの積極的な貢献者になることの4つだ。

「伝統的な通信事業のビジネスモデルは再発明される必要がある」とABI Researchのシニアディレクター、Dimitris Mavrakis（ディミトリス・マブラキス）氏は書いている。「ABI Researchは、携帯電話事業者が業務を合理化し、リソース割り当てを最適化し、コスト効率を高めるために自動化ソリューションをますます導入する明確な兆しを見て取っている。また、携帯電話事業者にとって現在の大きな焦点は、新たな消費者向けサービスと、デジタル変革の取り組みのために5G接続を緊急に必要としている企業にある」

Hoffman氏は、ディスアグリゲーションアーキテクチャとクラウド化をベースとした5Gの展開によって、こうした変革の取り組みの基盤が構築されてきたが、通信事業者は今、次の1歩を踏み出し、新しいネットワークアーキテクチャを活用して収益を生み出すデジタル・アプリケーションをサポートし、さらなる進歩に向けてネットワークを準備しなければならないと述べた。

「これは大変な作業なので、新しい”G”へ移行すると同時にアーキテクチャの変更を行うのは望ましくないです。それらは分けて行うべきです。」と同氏は言う。「5年もすれば新しい”G”が登場します。（中略）5Gの初期展開が完了した今、基盤となるインフラアーキテクチャを整理し、アプリケーションを完全に仮想化し、6Gへの移行をハードウェアアップグレードではなくソフトウェアのアップグレードとして行いましょう。私たちは今、実に興味深い時期にあります」

How should telecom operators approach digital transformation?