エッジコンピューティング
文:Dan Meyer

通信エッジ市場への投資は減速するのか

通信エッジ市場への投資は減速するのか

通信エッジコンピューティングの分野はあいかわらず、近い将来に実現するというよりも、長期的に可能性を秘めているという段階にある。また、今後の数年間で投資額は減少し始めることになりそうだ。

米Technology Business Research(TBR)の予測によると、通信サービス事業者がネットワークのリーチを拡大し、エッジを拡張するために投じる金額は、2023年の250億ドルから年々増えていき、2028年には465億ドルに達するという。一方で、増加のペースについては2025年の前年比約15%をピークに減速し始め、2028年には12%増になるとした。

エッジコンピューティングへの支出の大半は、従来のRANシステムを更新するためのネットワーク変革に関するもののほか、「ハイパースケーラーが分散コンピューティングのユースケースで利益を上げることを目指して行う展開」に関するものになるという。AIにますます力が入れられているのも、そうした取り組みの一例だ。

「通信エッジコンピューティング市場は拡大が続いています。当初の予測よりも遅いペースですが、ハイパースケーラーはAI向けに中央のクラウド側の開発に力を入れており、通信事業者は技術的な課題があり、オープン(仮想化)RANの展開に時間をかけているためです」。シニアアナリストのMichael Soper(マイケル・ソーパー)氏が述べている。

業界トップの経営層も、同じように楽観的な見方を変えていない。

ベライゾンのHans Vestberg(ハンス・ベストベリ)CEOは以前から、エッジコンピューティングサービスの提供については自社が強い位置にあると力説していた。今のところ大きなリターンは得られていないものの、あいわらず可能性を大いに訴えている。

「当社には高効率な周波数ポートフォリオと光ネットワーク容量があります。モバイルエッジコンピューティングを展開し、提供することができます。当社はAI経済の屋台骨であり、AI分野のプレイヤーのパートナーに最適です」と直近の決算説明会で語っている。「当社はお客様に最高のAIサービスを提供します。AIに関して当社が他社と一線を画しているのは、モバイルエッジコンピューティングに関する手腕と、光ネットワークのカバレッジの大きさです。データを発生源に近いところで処理することで、セキュリティや超低遅延、高帯域幅を必要とする、リアルタイムAIを実現しています。当社のネットワークが真価を発揮する領域であり、これまで実現不可能だった可能性が開かれているのです」

AIはエッジに恩恵をもたらすのか

こうした可能性について、ベライゾンの経営陣は、話題をにぎわしているAI/生成AIにも関係があることを示そうと試みている。

「ここ数年、当社では、モバイルエッジコンピューティングの一環として、ネットワークにストレージとコンピューティングを組み込む作業をしてきました」。ベライゾン・ビジネスのCTSO(最高技術ソリューション責任者)、Debika Bhattacharya(デビカ・バタチャリヤ)氏が、以前のインタビューでSDxCentralに話している。「お客様とお話しする中で、最近よく話題に上るのが、生成AIについてですとか、各クラウドの間で大量のデータを運ぶことは考えていないといったお話です。学習モデルをエッジアプリケーションと同じ場所に置いたり、推論モデルをエッジに置いたりする可能性もあるということです。そうしたユースケースを可能にする高性能なネットワークを必要とされていて、そうしたネットワークで拠点間やデバイス、ユーザーを接続し、製造拠点も本社もすべてハイパースケーラーのデータセンターに接続して、エッジコンピューティングと合わせて利用するイメージです。こうしたネットワークがゲームチェンジャーになっていくでしょう」

TBRのレポートには、現在、ハイパースケーラーはAI利用の最初の急増に対応するために中央のデータセンターを増強する方向に向かっているとある。この方向性はいずれ変えていくことが必要になるが、そうした変化が起こるのは、現在の市場予測の範囲を超えた時期になる可能性があるという。

「ハイパースケーラーは、いずれは支出先を中央からエッジの増強に向けなくてはなりません。ネットワークの新しいユースケースで要求される、レイテンシーとサービス品質を満たすためです」と説明されている。「TBRでは、2020年代を通じてハイパースケーラーがエンドポイントの近くにクラウドインフラを拡大していくと予測しています。また、その後は設備投資の対象を中央のクラウドからエッジクラウドに大きく移していくと考えています」

Is telecom edge market investment set to slow?

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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