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文:Dan Meyer

米マイクロソフト、買収後もVMwareと協力

米マイクロソフト、買収後もVMwareと協力

マイクロソフトが長期にわたって提供してきた「Azure VMware Solutions」のサポートを継続する。VMwareは新しく親会社となったBroadcomの意向を受けて事業モデルを変更しており、他のハイパースケーラーに続いてマイクロソフトもサポートを表明した。

「VMware by Broadcomと提携を継続できることを嬉しく思います」。Microsoft Azureの製品管理担当バイスプレジデント、Brett Tanzer(ブレット・タンザー)氏がブログ記事で説明している。「私たちはこれまでと変わらず、お客様にAzure VMware Solutionを共同提供していくことをお約束します。お客様のクラウドへの取り組みがどの段階にあるかを問わず、引き続き大いに協力して支援を提供していきます」

Azure VMware Solutionsは2019年、マイクロソフトとVMware、当時VMwareの親会社だったデル・テクノロジーズの提携による新サービスとして登場した。これによって、プライベートクラウドのAzureでVMwareのソフトウェアスタックを実行し、ハイブリッドクラウドを実現することが可能になった。

同サービスはVMware Cloud Foundation(VCF)を使用して構築されている。VCFはvSphere(仮想コンピューティング環境)、vSAN(ストレージ仮想化)、NSX(ネットワーク仮想化) を統合したソフトウェアスタックで、オンプレミス型プライベートクラウドやパブリッククラウドにデプロイできる。Azure VMware Solutionの場合にはAzureにデプロイされる。

Tanzer氏によると、今年は新しいリージョンでも利用可能となるほか、Azure Elastic SANなどの新サービスが追加されるという。

VMwareは2016年にもAmazon Web Services(AWS)と共同で類似のサービスをリリースしている。オンプレミスまたはAWSパブリッククラウドでVCFの実行を可能とするものだ。AWSを利用した同プラットフォームは、VMwareにとって大きな成功となった。

2020年半ばには、Google Cloudとも同様の提携を結んでいる。

VMwareのハイパースケーラー依存

アナリストらの指摘によれば、VMwareがAWSやAzure、Google Cloudなどのパブリッククラウドハイパースケーラーとの協業を重視している点は以前と変わっていないという。

「(VMware製品が)なくなることはないでしょう。今後もVMwareが持つ仮想化技術の出番がなくなることはないからです」。米調査会社フォレスターの上級アナリスト、Tracy Woo(トレイシー・ウー)氏がSDxCentralによる昨年の取材で述べている。「とはいえ、必ずしもこれまでのようにVMwareにとって大きな収益エンジンであり続けるかはわかりません」

「パブリッククラウド事業者が支配的なプレイヤーとなっている中で、VMwareは自らの地位を確立しようと取り組んできましたが、それほど有意義な結果にはなりませんでした。限られたニッチな役割を切り拓くことには成功しましたが、必ずしも超大手として考慮に挙がる立場にはなっていません」

そうした超大手はハイパースケーラーだという状況がますます進んでいる。パブリッククラウドの領域を支配し続ける一方、プライベートクラウドの領域でも存在感を増している。

米フレクセラによる調査「State of the Cloud 2023」(クラウドの現状)では、エンタープライズ企業がワークロードを実行するのに使用しているプライベートクラウドはマイクロソフトのAzure Stackが優勢であることがわかった。次いでAWS Outposts、Microsoft System Center、VMwareのvSphere/vCenterが続く。

VMwareはハイブリッドクラウド管理の分野で影響力拡大に努めてきた。クラウドネイティブなプラットフォーム「VMware Tanzu」によって主力プレイヤーとなり、フォレスターはVMwareを同分野の「リーダー」カテゴリーにランクインさせている。

Woo氏の指摘では、ハイブリッドクラウド管理の中心的な企業になるという面については大きな進展がみられるものの、ハイパースケーラーがプライベートクラウド領域にさらに力を入れれば、その影響を受ける可能性があるという。

「もしハイパースケーラーが互いに協力的になり、実際に統合を始め、こうした(オンプレミス型プラットフォーム)をひっそりとリリースする以上のことをするようになれば、VMwareは暗礁に乗り上げることになります」と氏。「(VMwareが)現在大きな役割を果たしているのはこの部分であり、おそらく最大の役割でもあるでしょう。パブリッククラウド事業者の間で非常にうまく補完的な役割を担い、クラウド管理ツールに可能な限りのレベルの可視性とシームレスな管理を提供しています」

「これはおそらく、現時点で他のどの企業よりもVMwareが得意としていることでしょう」

VMware、大企業重視へ

Azureによる発表の数日前には、Google Cloudがハイパースケーラーパートナーの第1号としてBroadcom VMwareと提携、「Google Cloud VMware Engine」上で「VMware Cloud Foundation」(VCF)を提供するモデルが発表されている。Broadcomの意向によるVMwareのソフトウェア提供形態、ライセンス形態のその他の変更についても発表された。

Google Cloudは、VMwareの新しいサブスクリプションベースのソフトウェア提供モデルに対応した最初のハイパースケーラーだと強調した。VCFの既存顧客は現在のサブスクリプションの残りをGoogle Cloud VMware Engineに移行・充当できるほか、VCFを完全に統合したGoogle Cloud VMware EngineをGoogle Cloudから直接購入することもできる。

英StorMagicの最高マーケティング・製品責任者、Bruce Kornfeld(ブルース・コーンフェルド)氏はデルに合計9年間在籍した人物だが(直近では2012年にグローバルアライアンス担当エグゼクティブディレクターを務めている)、SDxCentalによる最近の取材で、Broadcomによるライセンス形態の変更は、中小企業市場を捨てて大企業からさらに多くの売上を引き出すことを狙ったものだと説明している。

「Broadcomは非常にはっきりとした考えを持っており、その点は評価しなくてはなりません。自社にとって何が重要なのかが非常に明確で、常に一貫しています。彼らにとって大事なのは大企業です」と氏。「Broadcomがほしいのは大口顧客で、大口顧客から日がな一日、できるだけ稼いでいたいのです」

Microsoft stands by VMware post-Broadcom

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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