オラクル、EU Sovereign Cloudを発表=AWS、Google、Microsoftを一歩リード
オラクルがEU域内に新しく2つのクラウドリージョンを開設すると発表した。EUはデータプライバシー規制を強化しており、マイクロソフトなどの企業がEU域内のデータの取り扱いを誤ったとして罰金を科されている。
EUが主に懸念しているのは、EU域内にあるクラウドリージョンにEU域外の事業体がデータを要求し、取得に成功することだ。「EU域内で作成されたデータはEU域内に留めておく必要があります」。「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)担当バイスプレジデント、Leo Leung(レオ・リャン)氏が米SDxCentralの取材で語った。
これを受けてオラクルがドイツのフランクフルトとスペインのマドリードに開設するソブリンクラウドリージョンでは、パブリッククラウドリージョンと同様のクラウドサービス、SLA(サービスレベル契約)、サポート、価格帯を提供する。「新しいリージョンで運用してもプレミアム料金はかかりません」とLeung氏。2つのリージョンは「EU Sovereign Cloud」と呼ばれ、EU域内の担当者がサポート、運用を域内の別の法人が担当する。
データ主権に関する規制が進む一方であることから、オラクルは既存のさまざまな規制やデータ主権に対する取り組みを検討、「これが最適なソリューション」だと判断したという。OCIはデータ主権に対応したクラウドであり、「非常に強力なソリューションになるでしょう」と氏は述べている。
オラクルがAWS、グーグル、マイクロソフトに先んじる
Leung氏によると、Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud、Microsoft Azureといったハイパースケーラーが「論理分割のみを重視している」のに対し、オラクルはソブリンクラウド戦略を取っている点でユニークだという。ハイパースケーラーはデータ主権への対応についてはプレミアム料金を課し、通常とは別のポリシーと暗号化キーを設定するが、それでもソブリンデータがソブリンでないユーザーやデータと一緒に混ざってしまう可能性は残る。
「それで十分だと考えているのでしょうが」、「当社の考えは違います」とLeung氏。
他にも、ハイパースケーラーは地域によっては戦略としてソブリンデータセンター事業者と提携することも一般的だ。「当社としては、これも効率的ではないと考えています」と氏は言う。「この場合、ハイパースケーラーのリージョンを運用することに慣れていない事業者に対して運用能力をいくらか引き渡すか、別々の組織が関わる体制を選び、互いの連携で混乱が生じかねない状況には目をつむるということになるでしょう」
データ主権を保護するためには、特定の国でワークロードをホストしている比較的小規模なクラウド事業者を選択することもできる。しかし、「提供サービスは多くはないのが普通です」とLeung氏。「シンプルにコンピューティングとストレージのみということが多いでしょう。(OCIが強みとしている)データ管理やAI、アプリケーション開発などの高度なサービスについてはあきらめる必要があります」
ネットワーク接続の面では、オラクル初の2つのソブリンクラウドリージョンではインターネット接続や相互接続、あるいは接続を利用しないことも可能だ。暗号化については、企業・団体の多くが「クラウド事業者の施設とは別の場所に鍵管理ソフトウェアを置きたい」と考えており、オラクルではこれも可能だとしている。
オラクルはクラウドサービスを多種多様な方法で提供するという戦略を取っており、ソブリンクラウドもその一環だ。今回提供するソブリンクラウドは市場をリードしていくとLeung氏は予測する。「EU Sovereign CloudはいずれEUで最も広く使われるサービスとなり、最も多くの要件に対応するようになるでしょう。EU域内でお客様が何か新しいことを始める場合にも、当社にはそうしたユースケースに対応できるサービスがあります」
クラウドが誕生して15年間、クラウドと言えばパブリッククラウドが中心だった。次の段階は「クラウドサービスがさまざまな方法で利用できるようになること」だとLeung氏は言う。「クラウドの普及曲線を見てみると、現在はサービスを多様化させなければならない時期に来ていると思います。今回のサービスを含め、当社にはクラウドをさまざまな方法で提供できる素晴らしい力があると信じています」
Oracle one-ups AWS, Google, Microsoft with EU Sovereign Cloud
SDxCentral のレポーター。
データセンターのテクノロジーとビジネスケース、環境持続可能性、クラウドネイティブのエコシステムを担当している。
愛犬コビーとデンバーに住んでおり、一緒に世界一の散歩をする。
連絡先: echervek@sdxcentral.com
Twitter: @emmachervek
SDxCentral のレポーター。
データセンターのテクノロジーとビジネスケース、環境持続可能性、クラウドネイティブのエコシステムを担当している。
愛犬コビーとデンバーに住んでおり、一緒に世界一の散歩をする。
連絡先: echervek@sdxcentral.com
Twitter: @emmachervek
JOIN NEWSME ニュースレター購読
KCMEの革新的な技術情報を随時発信
5G・IoT・クラウド・セキュリティ・AIなどの注目領域のコンテンツをお届けします。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
RELATED ARTICLE 関連記事
-
IT Dan Meyer2024.08.30
シスコさらなる人員削減へ、ネットワーク部門を統合へ
シスコは新たな企業再編計画を推進しており、これにより…
-
セキュリティ Nancy Liu2024.08.05
フォーティネットのLacework買収がクラウドセキュリティを強化、CiscoやPalo Alto Networksと競合
フォーティネットは最近、クラウドセキュリティのスター…
-
ネットワーク SDxCentral Studios Sponsored by VMware2024.07.26
RANや5Gの運用を妨げている、5つの要因
通信業界では、RANからエッジ、コアに至るまで、エン…
-
セキュリティ Nancy Liu2024.07.24
マイクロソフトが参入、激変するSSE市場=中小ベンダーが退避へ
マイクロソフトが「Microsoft Entraスイ…
HOT TAG 注目タグ
RANKING 閲覧ランキング
-
セキュリティ Nancy Liu
デル、データ侵害を確認=ハッカーが4900万件の顧客データ販売を主張
-
IT Dan Meyer
BroadcomによるVMware製品の価格/ライセンスの変更がどうなったか
-
IT Dan Meyer
Dell、HPE、LenovoはBroadcomがVMwareの顧客の懸念を和らげるのに役立つか?
-
IT Dan Meyer
BroadcomがVMwareパートナープログラムの詳細を発表
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2024年における10のネットワーキング技術予測
-
セキュリティ Tobias Mann
米CitrixはMcAfee社、FireEye社と同じ運命を辿るのか=買収合併の後に
-
セキュリティ Nancy Liu
SASE市場が急成長=第1四半期、首位はZscaler
-
スイッチング技術 Tobias Mann
コパッケージドオプティクスの実用化は何年も先=専門家談
-
IT Dan Meyer
米キーサイトがVIAVIのスパイレント買収に「待った」=15億ドルを提示
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2023年 ITネットワークのトレンドTOP10 現時点