楽天モバイルCTO=「通信事業者向けソフトウェアにどうにも欠けているもの」
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楽天モバイルのCTO、Tareq Amin氏は、同社のインフラでうまく行っていない部分はないが、通信事業者向けクラウドソフトウェアは今のところ、業界が現在求めている内容に対応できていないと主張している。
アナリストや報道機関とともに行ったグループチャットの中で、氏は次のように話した。「仮想化が盛んに喧伝されてはいますが、使用されるソフトウェアプラットフォームの基盤となっているアーキテクチャについては、IMS(IPマルチメディアサブシステム)コアにしても、ポリシー機能やOCS機能にしても、伸縮自在性(Elasticity)を提供できているベンダーは世界に1社もありません」
「ソフトウェアアーキテクチャをプロプライエタリなハードウェア上に構築したモノリシックなアーキテクチャから仮想マシンに移行しますと言っても、それだけでは十分ではありません。クラウド化の夢を実現し、その恩恵を得るには、ソフトウェアアーキテクチャが進化して伸縮自在性をサポートしなければならないのです」とAmin氏は言う。
通信事業者のワークロードをクラウドに移行しても伸縮自在性は得られない、と氏は説明する。「Amazon Web ServicesやGoogle、Microsoftで叶えられる魔法はありません。基盤となるソフトウェアアーキテクチャにどうにも欠けているものがあるからです。進化させる必要があります」と氏。
「この業界は、全体として、ベンダーに対してエンタープライズ企業やOTT企業が行ってきたような形でソフトウェアアーキテクチャを進化させるよう求めてこなかったと思います。自動で伸縮自在なものは存在しません。私たちが望むような、ネットワーク全体に広がるオーケストレーションも存在しません」とAmin氏は言う。
通信事業者向けソフトウェアで、「楽天の目標に見合うような、複数の地域にまたがるネットワーク機能として自動伸縮性と自動修復機能を備えたものが存在しないのです」と氏は言う。ベンダー各社に対して、「エンタープライズIT企業のように考えてほしい、必ずしもレガシーなITソフトウェアプロバイダーのように考える必要はない」と求めているとも付け加えた。
楽天の通信事業のワークロードは期待通りに動作しているものの、それらのワークロードは氏がクラウドネイティブアーキテクチャとはこういうものであると考える基準を満たしておらず、満足していないと氏は言う。「ソフトウェアスタックのこうした最新化を推し進めるには、業界やエコシステムと一緒にやるべきことがまだたくさんあります。自動伸縮性、自動修復、レジリエンスなどを目指して、適切な場所、つまりクラウドネットワークファブリックに移行するために」
通信事業者向けソフトウェアは依然として「過小評価」されている
ソフトウェアは依然として過小評価され、軽視されている、あるいはこの分野はクラウドネイティブの原則を受け入れようとしていない、と氏は主張している。また、ソフトウェアは不十分でありながらも、「当社はこのネットワークのDNAとして、大規模な自動化を現実に可能にしました」と氏は言う。
Amin氏によれば、楽天モバイルがこれまで日本で全国規模のオープンRANを構築してきた実績によって、ネットワークアーキテクチャを仮想マシンやCNF(コンテナネットワーク機能)として純粋なソフトウェア機能に移行することで、運用効率の向上、コストの削減、迅速な新サービスの提供などのメリットを得られることが証明されたという。
楽天モバイルは今後、そのことをもっと大々的に証明していきたいと考えている。Rakuten Communications Platformは、通信事業者向けソフトウェア、オープンRANハードウェア、ネットワークインフラコンポーネント、サポートサービスからなるエコシステムで、楽天が他の通信事業者に再販するためにパッケージ化した商品だが、同事業ではオープンRANによって通信事業者が削減できるコストをさらに強調してアピールするため、今夏遅くには全てのアプリケーションと機器の実際のコストを公開する予定だ。
同社はオープンRANのハードウェアで利益を上げることには関心がない、とAmin氏は言う。また、大規模なオープンRANエコシステムのデジタル製品カタログを公開し、すべてのコストを開示していく。「楽天は(他社によるオープンRAN展開に)関与し、サポートやサービスを提供することができます。私たちに関わってほしくなければ、それもかまいません、私たちは皆さまとメーカー各社を直接お繋ぎしましょう」と氏は言う。
「私たちは、業界の製品消費のあり方を変えたいと考えています。ハードウェアの価格についても透明性を確保したい。当社では、もはやこれを業界の秘密として扱うことはしません。外に出しましょう。(複雑なMassive MIMO無線機などの)無線製品のコストを皆に正確に知ってもらいましょう」とAmin氏は言う。
さらに、楽天は間もなく「最も先進的なDU(分散ノード)の1つ」を「業界のDNAを考えれば、衝撃を持って受け止められるだろうと確信している価格構造で」発表する予定だと氏は言う。
オープンRAN環境での無線アクセスに使用されるDUは、Massive MIMOによって今後2年間でコモディティ化すると氏は予想しているが、対処と修正が切実に求められているプラットフォームだと氏は言う。「現状ではまだ、オープンRANプラットフォームのDUは最善のものとは全く言えず、最適化されておらず、競争力を高めるためには多くのことが欠けていると思っています」
氏によると、楽天は現在、インテルと協力して2022年にCPUとハードウェアアクセラレーションを1個のコモディティ化したプロセッサに統合するリファレンスデザインを開発中だという。
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Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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