OPEN-RAN
文:Dan Meyer

米AT&TのオープンRAN計画が進展=新たな商機は生まれるのか

米AT&TのオープンRAN計画が進展=新たな商機は生まれるのか

米通信大手AT&Tが進めている壮大なオープンRAN(オープン無線アクセスネットワーク)計画では、新規ベンダーの参加を予定している。アナリストの指摘では、通信事業者が多額の費用をかけて展開した5Gネットワークからさらなる効率を引き出すためには、こうした試みが重要だという。

CFO(最高財務責任者)のPascal Desroches(パスカル・デローシュ)氏は11日、バンク・オブ・アメリカ主催の「Cスイート TMT(テクノロジー・メディア・通信)カンファレンス」に登壇し、さらに多くのオープンRANベンダーを募る方向で進捗していると語った。

「いずれはRAN機器の提供元となる新規参入者が増えていけば、と考えています」と氏。「新しいベンダーが手を挙げ、いずれソリューションの一部を担いたいと言っていただけるのではないか、という動きが早くもいくらか見られます。当社としては、こうした動きが実際に進めば、長期的には当社の費用削減になるだけでなく、他社もこれをきっかけに動くことで業界全体の費用削減にもなると考えています」

こうした進展を代表するようなニュースがある。エリクソンは以前からオープンRAN分野でデル・テクノロジーズと協業していたが、最近これを強化した。両社は通信事業者の個別のニーズに合わせたネットワークのクラウド変革の計画策定支援に力を入れる。また、クラウドネイティブアーキテクチャの構築方法に関するサポートやガイダンスも併せて提供し、クラウドRANやオープンRANの展開におけるそうした個別のニーズに対応する。

「これは、ともかくやらなければならないことだ、業界のために私たちがやらなければならないことだと考えていました」。デルの通信システム事業担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、Dennis Hoffman(デニス・ホフマン)氏が、SDxCentralの取材で語った。エリクソンとの新たな提携は、両社が参加しているAT&Tの取り組みの中から生まれたものだという。「このサービスの素晴らしい点は、顧客主導で進められることです。私たちがホワイトボードを使ってこうした内容を検討することはありません。私たちはAT&Tの取り組みに参加しており、そこで共同で行っていることがあります。それを一定の形式にまとめて規模を拡大し、世界中の他の通信事業者に提供し、変革を加速させる手助けができないか検討するというアイデアでした」

AT&Tは最近、テキサス州のダラス南部の拠点にある商用5GネットワークでエリクソンによるクラウドRANの導入を開始した。AT&TのCバンドの周波数帯の1つをクラウドRANで使用するための移行が実施され、現在では商用トラフィックを支えている。

AT&Tとエリクソンはさらに、同環境での通話試験を完了し、「サードパーティのベンダーが将来、オープンRANにこの構成を使用できるようになります」と述べている。AT&Tは、2026年末までに無線ネットワークトラフィックの70%をオープンRAN経由で流すという目標を掲げている。

AT&TのオープンRANに関するニーズと機会

アナリストの指摘によると、オープンRANを展開しようとしている通信事業者にとって、こうした統合強化がますます重要になってきているという。

「オープンRANでは、インターフェイスの標準化によって相互運用を実現できるとされています。あらゆる提供元のアプリケーションやハードウェアを、標準化されたインターフェイスで接続できるようになります」。米調査会社リーコン・アナリティクスの創設者、Roger Entner(ロジャー・エントナー)氏が最近のポッドキャストで話している。「理論上は素晴らしく機能するはずですが、実際にはあまりうまくいっていません」

Entner氏は、グリーンフィールドの5Gネットワーク事業者、米ディッシュ・ネットワークがオープンRAN展開の早期に苦労していたことを指摘した。

AT&Tが自社のオープンRANの取り組みではエリクソンに大きく依存するという決定を下し、議論を呼んだのにはこの件が関連している。

「たとえば、AT&TはRANをオープン化しますが、エリクソンにすべてを委ね、シングルスタックのソリューションですべてを機能させ、責任のなすり合いが起こらないようにしました。そうしてからはじめて他の機器ベンダーに――場合によってはスタックの他の部分についても――オープンにするというのも意外な戦略ではありません」

スタックがオープンにされれば、新たな収益機会が生まれる可能性もある。

英調査会社アナリシス・メイソンは最近のレポートで、通信事業者が5Gサービスの提供でミッドバンドの活用を強化したければ、オープンRANベースの基地局装置に注力すべきだと指摘している。vRANアーキテクチャを基盤とすれば、オープンRANベースの多数の小さな装置を集中管理できる、と説明した。

「RANを仮想化すれば、スモールセルネットワーク内の管理やオブザーバビリティ、アジリティが向上し、QoEや効率も高まります」。アナリシス・メイソンのリサーチアナリスト、Stephen Burton(スティーブン・バートン)氏が述べている。「vRANであれば、中央のクラウドやオンプレミス環境にネットワーク機能を柔軟に展開することも可能です」

また、こうしたケースでオープンRANを活用すると、NaaS(Network as a Service)を提供しているニュートラルホストのネットワークとも連携しやすくなるという。

「スモールセルのカバレッジに関する戦略というのは、オープンRANを採用するか、あるいはニュートラルホストのネットワークを活用することで向上させられます」と氏。「ですが、この2つは両方組み合わせるとさらに効果を発揮します。オープンRANであれば、ニュートラルホストネットワークの柔軟性を最大限に活用できます。複数のテナント通信事業者の(ベンダーが異なる場合もある)アクティブなネットワークと、ニュートラルホストのインフラとの間で、高度な相互運用性を実現することが可能になるのです」

Will AT&T’s open RAN progress lead to new opportunities?

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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