ネットワーク
文:Matt Kapko

楽天モバイルの損失、第4四半期は10億ドル超え

楽天モバイルの損失、第4四半期は10億ドル超え

楽天はモバイルネットワークインフラ事業に進出したが、相変わらず費用が嵩んでいるようだ。2021年第4四半期、日本でのモバイルネットワーク事業の営業損失は10億2000万ドル(約1,174億円)を超えた。

同社はまだ多額の費用を抱えており苦境から抜け出せていないが、経営陣は2022年第2四半期から楽天モバイル事業の財務業績は改善すると話している。以前には2023年までは利益を出せないと述べていた。 

損失が続いているが、その傾向はどの数字から見ても驚くべきものがある。モバイル事業の損失は前年同期比で55%、前四半期比で13%近く拡大している。

4四半期は56500万ドル(約653億円)の売上高に対し102700万ドル(約1,187億円)の損失を計上した。売上高は前年比で48%近く伸びている。

こうした数字は楽天が日本で自前のネットワークを構築するのに大きな費用を費やしたこと、すでに世界でも最高レベルのモバイルネットワークが複数存在する日本で厳しい競争にさらされ続けていることを物語っている。

 

5G展開の遅れでメッセージが弱まっている

楽天モバイルは2月、4G LTEネットワークの人口カバー率が96%に達したと発表した。全国に展開する基地局の数も約20万ヵ所となっている。しかし5Gの展開はいまだ初期段階にあり、遅延に悩まされていることが全体としてメッセージが弱まる要因となっている。楽天モバイルは今も、純粋なオープンRANアーキテクチャで稼働している世界で唯一の主要ネットワークだ。とはいえ、そうした独自性も利益や大幅な市場シェアの拡大という成果にはまだ結びついていない。

実際、第4四半期に全社として約195000万ドルの営業損失を出した理由として、楽天はモバイル事業とロジスティクス事業で経常外の事業投資を行ったことを具体的に挙げている。これらの事業を除けば16億ドルの営業利益を上げていたという。

楽天のモバイル分野に関する野心が国境をゆうに越えて広がっているのも不思議はない。実際、同社は楽天シンフォニー事業を拡大し、大規模に展開することを目指している。楽天の創設者兼CEO、三木谷浩史氏は以前、楽天シンフォニーのTAMtotal addressable market:獲得可能な最大市場規模)は2025年には1,500億ドルに達する可能性があると語っていた。

 

楽天、オープンRANプラットフォームを「Symworld」としてリブランディング

同社は2月半ば、RAN・コア・エッジ向けに統合型のクラウド機能・ネットワーク機能を提供することを目的とした自動ワンタッチプラットフォーム「Symworld」を発表し、目標に向けて数歩前進した。同プラットフォームは202110月に正式に独立会社となった楽天シンフォニーの資産となっている。

Symworldは、最近買収した米Altiostarや楽天が持つ多岐に渡るオープンRAN技術資産とサービスを集約した「Rakuten Communications Platform」をリブランディング、リパッケージしたものだ。楽天が日本でのネットワーク構築・運用に使用したのと同じツールや機能をまとめ、他の通信事業者にサービスとして提供している。

RANインテリジェントコントローラ、オープンRAN機能とサービス、セキュリティ、サービス保証、運用・業務支援サービスをプラットフォームとして提供するという楽天の触れ込みは、個別の製品やサービスを購入して統合するという課題を抱えることなくオープンRANへの取り組みを進めたいキャリアの間で支持を得る可能性があることは間違いない。

同社にとってこれまでで最大の顧客となったのは、5GオープンRANの構築で契約を結んだドイツの1&1 Drillischというグリーンフィールドの通信事業者だ。楽天シンフォニーは、基地局のコミッショニング作業時間を数週間から数分に短縮し、CAPEX40%削減することが可能であり、ネットワークのOPEXを従来のフレームワークと比較して30%削減、新機能の導入を少なくとも10倍は高速化できるとしている。

「このプラットフォームを利用することで、あらゆるネットワークを最新化し、運用のあり方を人手と紙による調整作業からソフトウェア駆動、データ駆動へと移行させることができます。時期的にも、そろそろそうしてもいい頃です」。楽天シンフォニーCEOTareq Amin氏が企業ブログに書いている。

「成功しているクラウド事業者は自社のサービスをまず社内で利用し、次に他社に販売しています。楽天シンフォニーはこのクラウドネイティブの時代に同じことを行っている最初の通信事業者です。これによる成果は変革的なものになるかもしれないと考えています」

楽天は地理的な事業拡大の計画も発表しており、英国、フランス、ドイツに展開するとしている。この至極もっともな拡大によって、楽天シンフォニーの拠点は、日本、米国、シンガポール、インド、ヨーロッパ、中東、アフリカに広がることとなった。

楽天シンフォニーは2月末に始まるMWCバルセロナでSymworldの機能を披露する予定だとしている。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/rakuten-mobile-losses-surpass-1b-in-q4/2022/02/

Matt Kapko
Matt Kapko Senior Editor

Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

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