サムスン、Vodafoneによる英国の5G Open RANに機器提供
英Vodafoneは14日、サムスンの強力な助力を受けて欧州初となる商用Open RANネットワークを展開すると発表し、欧州におけるOpen RANのリーダーとしての地歩を固めた。
サムスンにとっては大きな契約の獲得だ。同社はターゲットとする地域を広くとることでRAN市場でのシェアを拡大しようとしている。サムスンの戦略においては、Open RANと仮想化RAN(vRAN)が際立った役割を担っている。
サムスンは今年、同社初の5G vRANポートフォリオを発表した。その前にはベライゾンとの大規模なRAN契約を結んでおり、通信事業者がサムスンの新しいRAN機器を商用展開する初の例となっている。
英国でこれまでに3か所の4G LTE Open RAN基地局を展開しているVodafoneは、当面はイングランド南西部とウェールズ全体に分布する2,500か所の基地局を利用してOpen RANを展開することに注力するとしている。その後は都市部にも展開していく計画だ。
Vodafoneは今年、大手競合3社とともに欧州におけるOpen RANの展開を支持するという誓約書に署名しており、4社はそろってOpen RANを「将来のモバイルネットワークに最適な技術」と称している。
Vodafoneによると、英国で進める5G Open RANの取り組みには、サムスンの他にデル・テクノロジーズ、NEC、米Wind River、キャップジェミニ・エンジニアリング、キーサイト・テクノロジーの協力を受けており、これまでに行われたOpen RAN展開の中でも世界最大級のものになるという。
現在、世界で最も広範に展開されているOpen RAN 5Gネットワークは楽天モバイルのものだ。米Dish Networkは5G Open RANを米国全土に展開しようとしており、年内に複数の都市でサービスの展開を開始する予定だとしている。
サムスン、Vodafoneの5G Open RAN展開のトップベンダーに
VodafoneがOpen RANへの対応を進めている基地局の多くはかつてファーウェイ製機器を利用していたと考えられる。英国政府はモバイル通信事業者に対し2027年までにネットワークからすべてのファーウェイ製機器を撤去するよう求めており、Vodafoneはそうした基地局の約1/3についてOpen RAN機器にリプレイスするとしている。
VodafoneのCTO、Johan Wibergh氏はあるステートメントの中で次のように述べている。「Open RANはお客様に多大なメリットをもたらします。当社のネットワークは高度にプログラマブルになり、自動化される予定です。つまり、複数の基地局で同時に新機能をリリースしたり、容量の追加や管理をより迅速に行ったり、障害を即座に解決したり、企業様にオンデマンド接続を提供したりといったことが可能になるのです」
「Open RANは業界を活気づけてもいます。多くのベンダーによる大きな技術革新を促し、必要とされているサプライチェーンの多様性をもたらすことでデジタル経済を活性化していくでしょう」
サムスンによると、Massive MIMOを備えた5G機器など、ローバンド用・ミッドバンド用のvRAN・Open RAN準拠の無線機をVodafoneに提供していくという。同社にとって欧州では初の大規模なOpen RAN契約だとも話す。自社のシステムについては、すでに従来のRANアーキテクチャに負けないものになっていると自負している。
サムスンのネットワーク部門で技術担当シニアディレクターを務めるFarook Hussan氏は、最近質問に答えて次のように述べている。「業界では、vRANのパフォーマンスはベンダー固有の目的別ソリューションと比べて低くなる可能性があるのではないかという議論がなされてきましたが、従来のハードウェアベースの機器と同等のパフォーマンスが達成可能であることをサムスンのvRANが証明しています」
Vodafone、複数の5G Open RANベンダーと提携
サムスンはまた、VodafoneにリファレンスRANソフトウェアも提供する。Vodafoneは今回の取り組みで、サムスン製・NEC製両方のMassive MIMO無線機を利用する予定だ。
Vodafoneによると、展開第一弾では仮想CU/DUにDell EMC PowerEdgeサーバを利用するという。
同社の説明では、同サーバにはWind River社が提供するクラウドベースのコンテナソフトウェアを搭載し、キーサイトとキャップジェミニからは検証と統合サポートの提供を受けるという。また、複数のチップセットサプライヤーと協力してOpen RAN向けチップの性能向上と開発を促進していくとした。
Vodafoneはインテルとも協業しており、最近はクアルコムとも協力関係を結んだ。ベンダー向けに5G vRAN/Open RAN機器を構築するためのテクニカルブループリントを公開することを目指している。
クアルコムは2020年後半、3種のチップセットプラットフォームをもってRANインフラ市場に再参入することを正式に発表しており、複数のグローバルな通信事業者がこの取り組みを支持している。
Vodafoneは今月、英国で実施したOpen RANの試験運用において、プログラマブルなAIベースのRIC(RANインテリジェントコントローラー)を使用することで複数の顧客が利用する5G基地局の容量を倍増させたとしている。
また、今年後半にはスペインのマラガとドイツのドレスデンに新しい研究開発センターを開設するという。新しいビジネスアプリケーション、プライベートネットワーク、サイバーセキュリティを進展させるなどのOpen RAN活動を支える。
Vodafoneによると、サムスンのOpen RAN機器の展開は今年中に開始されるという。
https://www.sdxcentral.com/articles/news/samsung-gains-foothold-in-vodafones-uk-5g-open-ran/2021/06/
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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