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文:Dan Meyer

AT&Tが提携する5G衛星通信にベライゾンも参画=遠隔地にサービスを拡大

AT&Tが提携する5G衛星通信にベライゾンも参画=遠隔地にサービスを拡大

米通信大手ベライゾンが5月29日、ASTスペースモバイルの衛星通信サービスと1億ドルで提携した。競合の米AT&Tと協力し、カバレッジの提供が困難な地域の代替サービスとしてASTの衛星ブロードバンドサービスを提供、5Gのサービスエリアを拡大する

今回の「戦略的提携」では、ASTのD2D(Direct-to-Device、衛星からデバイスへの直接通信)サービスで使用する周波数帯として、ベライゾンが保有する850MHz帯の一部を提供する。従来から使われているセルラー用の周波数帯域であるため、現在使われているベライゾン端末のほとんどが対応しており、端末との直接通信が可能になる。

ベライゾンは衛星サービスの商用利用に対する前払いとして6,500万ドルを支払う。そのうちの4,500万ドルの支払いは「一定の条件を前提に」行われるとした。さらに転換社債3,500万ドルを購入する形で出資、ベライゾンがASTの株式を保有することになる。

「今回ASTと契約を結んだことで、当社の周波数帯とASTの衛星ネットワークを活用できるようになります。通常の地上インフラではセルラー信号が届かない米国内の隅々まで、人々の生活に欠かせないインターネット接続を提供することが可能です」。ベライゾンの技術・製品開発担当シニアバイスプレジデント、Srini Kalapala(スリニ・カラパラ)氏が述べている。

ASTスペースモバイルは今夏、最初の商業衛星を低軌道(LEO)に打ち上げる予定だ。最終的に5基の衛星を軌道に乗せる計画だという。低軌道衛星コンステレーションは通常、高度1,000km未満の比較的地球に近い位置で運用するもので、地球周回軌道を約90分で1周することができる。このため、中軌道(MEO)で運用する衛星と比較すると、1基あたりのカバレッジが低くなるかわりに遅延を抑えることが可能だ。

ベライゾンが衛星を使ったD2D通信の分野に本格的に参入するのはこれが初となる。今回の契約が持つ意義は大きい。

同社は数年前にアマゾンとも提携し、通信サービスの提供がない、あるいは不足している地域にLEO衛星を利用したインターネット接続を提供するプロジェクト「Kuiper」(カイパー)に参加している。100億ドルの予算を持つ同プロジェクトでは、LEO衛星3,200基以上を宇宙に打ち上げる計画で、アマゾンは来年から打ち上げを開始、2026年半ばまでに少なくとも半数を運用可能にすることを目指している。通信速度については、初期に実施した検証で、最も大型の顧客向け端末で下り速度最大1Gbpsを確認したとしている。

ベライゾン、AT&Tが衛星サービスでASTと提携

AT&TとASTの間でも、5月に同様の契約が結ばれている。両社が「正式な商業契約」として締結したもので、ASTが間もなく打ち上げる商業衛星をAT&Tが利用し、標準的なAT&T端末にブロードバンド接続を提供するという内容だ。契約期間は2030年までとなっている。

AT&Tは1年以上前からASTと協力関係にあり、850MHz帯の一部をリースする契約を結んでいる。それと並行して、ベライゾンとASTの提携を支持してもいる。

「ASTスペースモバイルに関する本日のニュースは、全米規模の衛星ブロードバンドを普段お使いの携帯電話に提供するという、私たちの共通の取り組みを強化するものです」。AT&Tのネットワーク責任者で、最近ASTスペースモバイルの取締役に指名されたChris Sambar(クリス・サンバー)氏が述べている。「ASTスペースモバイルと当社の間では、米国内の他のモバイル事業者によってさらなる周波数帯とカバレッジがもたらされ、さらに優れたソリューションの構築やサービスの拡大につながることを共に歓迎することで合意しています。ASTや世界中の他のパートナーとともに、すべての人に接続を提供できる未来を作っていきます」

AT&TとASTは昨年、試験衛星「BlueWalker 3」と未改造のスマートフォン2台を接続した、5G音声通話・データ通信サービス試験に成功した。同試験では「3GPP Release 16」仕様に基づく5G技術を使用している。

別の試験では、AT&T、ASTスペースモバイル、ボーダフォン、ノキアが協働し、衛星と地上端末間の5G接続で下り速度14Mbpsを達成している。以前に4G LTE接続で達成した10Mbpsを上回る結果となった。

こうした速度を達成できたことには大きな意味がある。衛星通信によるブロードバンド接続の性能が向上するためで、特に、衛星通信はデジタルデバイド(情報格差)の解消や、SD-WANサービスのような高スループットの企業用途に役立てたいという理由で注目されている。また、速度を確保できれば、従来の携帯電話事業者が衛星システムを利用して5Gのカバレッジを拡大する余地もさらに広がっていく。

こうした速度を達成できたことには大きな意味がある。衛星通信によるブロードバンド接続の性能が向上するためで、特に、衛星通信はデジタルデバイド(情報格差)の解消や、SD-WANサービスのような高スループットの企業用途に役立てたいという理由で注目されている。また、速度を確保できれば、衛星システムを利用して従来の携帯電話事業者が5Gのカバレッジを拡大できる機会もさらに広がっていく。

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Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
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