デルとエリクソン、AT&Tが協力=オープンRANの後押しになるか
スウェーデン の通信機器大手エリクソンと米デル・テクノロジーズは、長年にわたる通信分野での提携関係を強化し、オープンかつクラウドベースの無線アクセスネットワーク(RAN)の導入を支援する。米通信大手AT&Tが今年後半に本格的な開始を予定している、注目すべき導入案件もその1つだ。
今回の提携強化で、エリクソンとデルは、通信事業者各社の個別のニーズに合わせたネットワークのクラウド変革の計画策定支援に力を入れる。また、クラウドネイティブアーキテクチャの構築方法に関するサポートやガイダンスも併せて提供し、クラウドRANやオープンRANの展開におけるそうした個別のニーズに対応する。
さらに、Dell PowerEdgeサーバーとエリクソンのCloud RANソフトウェアの組み合わせを商用導入する。商用環境における同システムの展開・管理を容易にするための事前認証も行う。
デル・テクノロジーズの通信システム事業担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのDennis Hoffman(デニス・ホフマン)氏 は、SDxCentralの取材に対し、今回の取り決めは昨春 に両社が発表した契約を拡大したものだと語った。当時の契約により、Dell PowerEdgeサーバーがエリクソンのクラウドRANサービスの一部としてエコシステムに組み込まれ、今回の契約では、新たに「3つの重要な要素」が加わったという。
前回よりも上位の視点から戦略的焦点を定め、提供内容が広がり、より顧客主導型になっているという3点だ。
「今回の契約は、両社の上層部で何をすべきかを話し合い、決定し、合意したという意味で、前回よりもかなり戦略的なものになりました。また、両社の戦略を前に推し進める活動に共同で取り組めるようになりましたが、こうした活動も両社の理念と非常によく合致したものになっていると思います」
これには、ネットワーク変革に向けた広範なエコシステム戦略を推進するため、それぞれのプラットフォームを統合するにあたって、より包括的なアプローチをとることも含まれる。
「多くの人は、何をすればいいのか分からないだろうと思います」。氏はこうした取り組みについて語った。「彼らは変革に向けて目標を持っていますし、ネットワークアーキテクチャの変更がその中でも大きな部分を占めることは理解しています。しかし、率直に言って、たじろぐような大きな計画になりますし、可変要素も多いため、計画を策定する際には、何をする上でもサポートやガイダンス、アドバイスが必要になるでしょう」
デルはオープンRANエコシステムを拡大したい
顧客主導という面については、AT&Tの野心的なオープンRAN計画に関連するエリクソンとデルの取り組みが基になっている。この計画は昨冬 に発表されたもので、AT&Tは今後数年間で140億ドルを投じてネットワーク全体にオープンRANコンポーネントを導入する予定だ。
エリクソンは導入作業の大部分を担当しており、2月 にはデルが製品ベンダーとして加わることも発表された。
「これは、ともかくやらなければならないことだ、業界のために私たちがやらなければならないことだと考えていました」と氏。エリクソンとの新たな提携が、両社の参加しているAT&Tの取り組みとどのようにマッチするのかについて、次のように語った。「このソリューションの素晴らしい点は、顧客主導で進められることで、私たちがホワイトボードを使って何かをすることはありません。私たちはAT&Tの取り組みに共同で参加しており、そこで行っている内容を取り入れることができます。それを一定の形式にまとめて規模を拡大し、世界中の他の通信事業者に提供し、変革を加速させる手助けができないか検討するというアイデアでした」
AT&Tは最近、テキサス州のダラス南部の拠点にある商用5GネットワークでEricsson Cloud RANの導入を開始した。AT&TのCバンドの周波数帯の1つをCloud RANインフラに移行する作業が実施され、現在では商用トラフィックを支えている。
AT&Tとエリクソンはまた、商用Cloud RANインフラ全体でテスト通話を完了し、「サードパーティのベンダーが将来、オープンRANにこの構成を使用できるようになります」と述べている。AT&Tは、2026年末までに無線ネットワークトラフィックの70%をオープンRAN経由で流すという目標を掲げている。
この初期の取り組みによって、オープンネットワークアーキテクチャの概念が、上は経営層から下は現場まで浸透する流れが加速した、と同氏は指摘する。
「オープンネットワークに関する問題点は、CTOオフィスで調査、議論、決定されるようなアーキテクチャに関する問題から、運用チームが運用リスクと信頼性を現実的に検討するような実用的なアーキテクチャに関するものへと移行しつつあります」と氏。「ホワイトボードから現場に取り組みの場が移ったのなら、業界にとって大きなことです。当社にもそうした質問が山ほど寄せられるようになっていますが、トラブルシューティングをしている時間がありません。私がするのは、この都市のRANがダウンしているとか、問題が発生していると伝えることですが、非難を受けたくはありません。(サービスレベル契約と)損害賠償をひとまとめに扱っていただければ、私たち全員が問題をできるだけ早く解決するという共通の動機を持っていると確信することができます。これは、CTOチームとは、詳細なレベルまで話し合ったことではありません」
また、氏によると、今回の契約は、今年デルがノキアと結んだ契約とは異なるものだという。ノキアとの契約は、ノキアのプライベート5Gの販売拡大や「ノキアが事実上x86機器の分野から撤退する」ことに重点を置いたものだとした。
エリクソンとの提携は、「ノキアやサムスンにとっても」より緊密な統合の取り組みを進めるかもしれないという点で「同様に興味深い」ものだという。
「少なくとも中国以外のネットワーク機器プロバイダーの間では、このようなパートナーシップが業界の発展に不可欠になるという点で、非常に幅広い理念の一致が見られるようになったと思います」と氏。「ですから、今後の動向に注目してください。さらに数社が参入してくると予想しています」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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