競争の激しいSD-WAN市場で勝ち抜くには何が必要だろうか。英調査会社ガートナーが発表した最新の「マジック・クアドラント」（WANエッジインフラ部門）によると、まずは強固なSASE戦略を用意することから始めるのが有効かもしれない。

同レポートで「リーダー」カテゴリーに名を連ねた6社（フォーティネット、VMware、Versa Networks、パロアルトネットワークス、シスコ、ヒューレット・パッカード エンタープライズ（HPE）傘下のSilver Peak）は、いずれもSASE製品や関連パートナーシップを発表している。

今後についても、SD-WAN市場は向こう数年でさらにSASE化が進むというのがガートナー社の予測だ。アナリストの予測によると、2024年までにはSD-WANの顧客の70%がSASEアーキテクチャを導入済みになるという。2021年の数字はわずか40%だ。

レポートでは、SASE機能についてはVersa社とパロアルトネットワークスが最も高い評価を受けている。

Versa社は「市場で最も幅広く、最も機能に優れたソリューション」を持っているという。パロアルトネットワークスは「単一ベンダーによるSASEソリューションを目指して邁進する主要ベンダー」と称賛された。

一方、VMware社とHPE社も独自のSASEプラットフォームを発表したものの、ガートナー社は両社がサードパーティのセキュリティ事業者に依存していることを批判した。

ガートナー社はHPE社について、「クラウドセキュリティのようなネイティブかつ高度なセキュリティ機能については、他ベンダー数社と比較すると競争力に劣る」と書いている。

VMware社のSASEはメンロ・セキュリティと共同で提供されており、HPE社はこれまでにイスラエルのCheck Point社や米Cloudflareといった多数のセキュリティベンダーとの統合を発表している。

ガートナー社のアナリストらは、パートナーシップに頼ることで顧客の新たなセキュリティニーズに対応する能力が限られたものになる可能性があると指摘する。

一方、昨年米Opaqを買収してSASE市場に足を踏み入れたばかりのFortinet社は、マルチベンダーのSASEアーキテクチャをサポートしていないとして批判された。ガートナー社は同社の「FortiSASE」プラットフォームについて、「有用性はほとんど未知数」だと評している。

AIによる自動化

また、ガートナー社の今年のレポートでは、リーダーカテゴリーの企業の間での重要な差別化要因として、人工知能（AI）、機械学習、自動化を挙げている。

予測によると、企業によるSD-WAN導入のうち、こうした技術の組み合わせによって日々の運用を自動化するケースが2025年までには40％以上になるという。2021年現在は5%未満だ。

今年のレポートでリーダー企業に分類された6社は、いずれも現在までに何らかのAI運用機能を発表している。

ガートナー社は特に、シスコが米ThousandEyesとの統合によって実現した「インターネットを通ってパブリッククラウドサービスに向かうトラフィックを強力に可視化する機能」を取り上げた。

シスコは今春、年次イベント「Cisco Live」でこの統合を発表した。少し前にはこれによって顧客がさまざまなミドルマイルネットワーク上でトラフィックを動的にリルートし、中断を軽減できるようになる仕組みについて詳述している。

また、レポートではパロアルトネットワークスのAI分析機能が「強力」であることも指摘しており、これも見逃せない点だ。

競争優位を保つうえでの課題

主要ベンダー6社は今年も競合他社の追撃をかわしたものの、パフォーマンスが完璧だったとは言えない。

ガートナー社はシスコについて、価格の高さ、顧客体験の評価の低さ、自社のSD-WANプラットフォーム「Viptela」「Meraki」間の相互運用性の低さを改めて批判した。

買収というトピックについては、パロアルトネットワークスが米CloudGenixの買収によって獲得したSD-WANアプライアンス「ION」シリーズと既存のハードウェアファイアウォールを1つの機器に統合することができていないと指摘。

「同社はブランチセキュリティ、クラウドセキュリティ、SD-WANを提供するエレガントな統合ソリューションを持たず、複数の製品を抱えている」と書いている。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/sase-ai-fuel-sd-wan-winners/2021/09/