COP28（国連気候変動枠組み条約の第28回締約国会議）が終了し、そのすぐ後に2024年がやって来る。テック業界も気候変動へのレジリエンスの重要性を無視することはできなさそうだ。ほとんどの企業が環境に大きな影響を与えているとともに、環境を守る潜在力も持っている。

SDxCentralでは、データセンター／クラウド／通信／ネットワーク業界の持続可能性への取り組みについて取材を続けている。以下は来年に注目したい、主なトレンドだ。

電力網の最新化に取り組むベンダーが増加

2024年、資本に余裕のあるテック大手各社がエネルギー転換を目指し、電力網の最新化を支援する共同取り組みを拡大しそうだ。既存技術の再構築による電力網の脱炭素化、革新的なアプローチによる新技術の開発にリソースを注ぎ、世界の電力システムの持続可能性を向上させるとともに、自社の環境フットプリントを削減する。

電力網の最新化というと、太陽光や風力などの再生可能エネルギー、蓄電池などによる電力を昔から炭素排出量の多い電力網に流すことのように聞こえるが、送配電についても最新化は必要だ。「（電力網の末端には）そうした新たな負荷を全て最適化、分散できるようなテクノロジーは備わっていません」。米インテルのエネルギー分野のCoE（センターオブエクセレンス）でゼネラルマネージャーを務める、Mike Bates（マイク・ベイツ）氏がSDxCentralの取材で語った。

インテルは自社の技術を活用して電力網の最新化を支援している1社だ。E4S（スマート二次変電所向けエッジ）アライアンスの一員として、電力網に対するソフトウェア定義のアプローチを開拓、変電所内に小規模なデータセンターを構築している。電力供給における重要な変換拠点だ。

変電所では、並んでいた古い独自仕様の電気・機械設備が撤去され、サーバーラックが設置された。

2024年もこのトレンドは継続し、化石燃料からの脱却という課題に対して大手テック企業が新しく革新的なアプローチを開拓していくと予想される。

液冷データセンターがAI向けインフラの最適解に

HPC（高性能計算）はいかにもAIのトレーニングや推論に必要なものらしく、通常のコンピューティングよりも多くのエネルギーと計算能力を必要とする。コストや環境への影響を抑えるには、一般的な企業にHPCを提供するというニーズに応えられる、効率の高いチップやソフトウェア、プロセスの登場を待ちたい。

米調査会社デローログループも、データセンターインフラ市場は来年、AIのおかげで歴史的な水準に成長すると予測している。2023年第3四半期の時点でも、熱管理セグメントが同市場で一二を争う急成長を見せた。来年は新しい冷却方法に顧客の注目が集まり、パブリッククラウドで液冷の導入が拡大すると予想される。

とはいえ、AIの登場から各社の取締役会が導入を見込むまでの時間が短かったことから、ITチームには適切な熱・エネルギー管理装置を展開する余裕はほとんどなかったという。リサーチディレクターのLucas Beran（ルーカス・ベラン）氏がSDxCentralの取材で述べている。

当座の解決策として、多くのITチームが補助冷却として高密度空冷や液体補助空冷を追加することにした。これによって空冷を前提につくられている施設でAI向けのインフラ展開が可能になっている。2024年以降は大規模な液冷システムの使用を前提とした施設が増え、HPCインフラに必要とされる持続可能性や消費電力が実現されるとした。

AIワークロードの展開が増え続けるなか、液冷技術を活用したデータセンターは2024年、ITチームによる欲しいものリストでも上位に来ると思われる。

The top tech sustainability trends of 2024