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文:Matt Kapko

仮想化で通信事業者に必要なこと―文化面・技術面の課題の両立

仮想化で通信事業者に必要なこと―文化面・技術面の課題の両立

モバイル通信事業者各社はネットワーク仮想化に関して多くの夢想と資金を抱えている。仮想化の手腕によってその行く末は決まるが、未解決の問題はまだ多い。

米調査会社Appledore Researchの共同経営者兼プリンシパルアナリスト、Grant Lenahan氏によると、ネットワーク仮想化の最初の波は仮想マシン(VM)の管理とオーケストレーションに関するものだったが、通信事業者が得た自動化やアジリティといった恩恵は当初のコンセプトで見込まれていたよりもわずかなものに過ぎなかったという。

「24カ月ほど前、彼らはリセットボタンを押してクラウドネイティブに向かい始めました」と氏。ほとんどの通信サービスプロバイダは仮想化のメリットをより多く実現するために、こうした「苦渋の決断」をしてきたという。

 

仮想化への取り組みに対する人々の不快感

仮想化は技術的・工学的に複雑なものでもあるが、皮肉なことに、人手の介入と仮想化導入のバランスを取る必要もある。

米調査会社LightCountingのコンサルタント、Roy Rubenstein氏はSDxCentralに対し、「通信事業者がこれほど野心的なことに取り組んだことはこれまでにないと思います」と語った。

「大きな技術的変化を経験していた時にもです……(中略)……これに伴う課題の全ては、これほどの変化を人間は受け入れることしかできないということです」。また、「社会に受け入れられるまでには時間がかかるものです」とも話す。

完全に仮想化し、自動化し、オーケストレーションを行い、HW/SWを分離させたネットワークというビジョンは比較的明確なものだが、集団的な取り組みは20年から30年続く可能性があるとRubenstein氏は言う。

 

テクノロジーの融合が仮想化を促進

モバイルネットワーク事業者各社は、5G、モバイルエッジコンピューティング、クラウドネイティブ技術、テレコムクラウドといった分野における各種の活動や開発の成果が合わされば、仮想化の目標を達成できると頼みにしている。Rubenstein氏の説明によると、こうした取り組みは主にばらばらに行われてはいるが、キャリア各社がコアネットワーク機能の仮想化からエッジでのより興味深く複雑な取り組みに軸足を移している現在、勢いを増しているという。

米調査会社Moor Insights & Strategyのシニアアナリスト、Will Townsend氏はSDxCentralに対し、「モバイルエッジコンピューティングとテレコムクラウドは、必要となる規模とパフォーマンスに大きく影響します」と語っている。

実際、ソフトウェアがネットワークのあらゆるレイヤーや構成要素に浸透し、モバイルネットワークインフラが進化してWebスケールアーキテクチャを採用していくなか、ハイパースケーラがキャリア全体にとって最も重要なベンダーになり、また脅威となる可能性は大いにある。

Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudといったパブリッククラウドプロバイダは、通信事業者向けのワークロードやサービスをどんどん飲み込んでいっている。

クラウドネイティブ技術というのは、極力控えめに言って「パブリッククラウド業界からのお下がり」だとLenahan氏は言う。「多くのパブリッククラウドは実際に高可用性のワークロードをホストすることができ、こうしたWebスケーラの投資モデルと共有ユーザーモデルには現実にいくらかの経済的なメリットがあります」

 

意識改革は簡単にはいかない

とはいえ、これについてもキャリア側では社内で多くの意識改革が必要になると氏は説明する。「クラウドで行くとなれば、通信サービスプロバイダは信頼性の低いプラットフォーム上に信頼性の高いアプリケーションを構築するのではなく、アクティブに管理され自己回復能力のある本質的に信頼性の高いプラットフォーム上に信頼性の低いアプリケーションを構築するよう変化していく必要があります」とLenahan氏は言う。

「エンジニアたちは、率直に言ってこれまで十分に役立ってきた何十年もの経験を忘れなければなりません」と氏。

そのため、ほとんどの通信事業者にとって新しい運用モデルを受け入れることが仮想化の目標達成への最大の障害になる可能性が高いとLenahan氏は言う。「クラウドネイティブでは、運用チームがインテリジェントな自動化を信頼して継続的な変更を自動で行う必要があります。干渉せず、不確実性に慣れていることが求められます。これは厳しいSLA(合意サービス水準)とそれを満たすためのハンズオンコントロールという形で訓練を受けてきたほとんどの通信事業者の運用スタッフにとって、新しい領域です」

通信事業者は容易には認めないかもしれないが、こうした技術面・運用面での課題はほとんどの通信事業者が同程度に抱えている。「この点に関して、他社に比べて大きくリードできるオペレータはいないでしょう」とRubenstein氏は言う。「あらゆる種類の技術を準備する必要がありますし、オペレータ1社が単独のベンダーを選んでできることではありません。業界全体での取り組みなのです」

https://www.sdxcentral.com/articles/news/virtualization-requires-operators-to-balance-cultural-technical-challenges/2021/02/

Matt Kapko
Matt Kapko Senior Editor

Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

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Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

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