クラウド
文:Matt Kapko

AWSの障害で通信クラウドの課題が浮き彫りに

AWSの障害で通信クラウドの課題が浮き彫りに

クラウドは多くの支持を得ているが、障害が起きないというわけではない。12月上旬、世界最大のパブリッククラウドであるAmazon Web Services(AWS)が長時間の障害に見舞われ、基本的なアプリケーションや数億人の顧客を抱える巨大企業に影響が出たことで、多くの人々や企業がこのことを再認識することとなった。

障害が発生した時、AWSに依存している企業・組織の大部分は打つ手なしの状況となった。

この時の障害は半日以上続き、通信ネットワークのクリティカルなサービスやワークロードをクラウドインフラに完全に依存することはまだできていないし、今後も不可能かもしれないということを思い起こさせる出来事となった。

パブリッククラウドの利点が何かははっきりしている――効率、スケーラビリティ、さまざまな機能をより少ない機器で統合できることだ。米調査会社ABI Researchのシニアアナリスト、Don Alusha氏の説明によると、通信事業者にとっては、経済性の向上、ビジネスアジリティ、(ハードウェアでなく)ソフトウェアを利用することで実現できるスピードでイノベーションを加速できることを意味するという。

 

通信事業者のアップタイム保証要件は厳しい

しかし、「通信サービス事業者のSLA(サービス品質保証)は非常に厳しく、サービスのアップタイム保証はクラウドのソフトウェアやプラットフォームと比べてもやはり厳しいものです」と氏は質問に答えて書いている。

「通信事業者はクラウドによるイノベーションやアジリティの恩恵を受ける立場にありますが、クラウド駆動型の手法やツールチェインを展開するリスクとのバランスを取る必要があります」と氏。

こうしたリスクは通信事業者がクラウドに展開するサービスの数や、それぞれのサービスの重要性に応じて増大する。

米調査会社ガートナーでクラウドサービス・テクノロジー担当VPを務めるSid Nag氏によると、OSS/BSSやプロビジョニング、課金といったバックエンドシステムをクラウドで運用しているモバイルネットワーク事業者は障害の影響を受ける可能性があるという。

氏によると、モバイル通信事業者のほとんどは現在はクラウドでは中核の接続機能を実行していないが、仮想化やネットワークの保守・運用の自動化を進めており、5G時代には状況が変わっていくという。

 

パブリッククラウドでの通信事業者の立ち位置はまだ不明確

「競争が差し迫る中で、通信事業者の立ち位置がそれぞれどうなるかこの先決まっていくわけですが、その中でパブリッククラウドがどういった役割を果たすことになるのかについてはまだ正確には見えてきていません」。Alusha氏は言う。また、クラウドベースのソフトウェアプログラムが通信アーキテクチャの厳しい要件をどの程度満たすことができるのかという点についてもやはり不確実だ。

「パブリッククラウドを利用するに当たっては、いっそうの熟練と、通信事業者レベルの厳格なSLAおよびクリティカルなネットワーク接続向けのサービスアップタイム保証契約を確実に結べるハードニングプロセスが必要になってくるでしょう」。Alusha氏は説明している。

米調査会社Appledore Researchの創設者兼主席アナリストのPatrick Kelly氏も同意見だ。クラウドインフラは大きな経済的利益をもたらす一方で、「重要インフラ向けクラウドのレジリエンスはセキュリティや信頼性の面でまだ強化が必要です」と補足している。

こうしたリスクはAWSのようなハイパースケーラーに限ったことではない。モバイルネットワークの障害はクラウドとは全く関係のないところでもすでに起きている。

 

障害はハイパースケーラーでだけ起こるものではない

「障害は発生するものです」。米調査会社Technology Business Researchの主席アナリスト、Chris Antlitz氏は言う。「パブリッククラウドでも起こり得ますし、既にパブリッククラウドで起きた事例も多々あります。自社のプライベートクラウドを運営している通信事業者も障害と無縁ではいられません」

氏によると、ICTワークロードをクラウドに移行するという長期的な傾向に関してはAWSの障害による影響はないという。また、障害はハイパースケーラーにとって学びと改善の機会にもなるとした。

「パブリッククラウドのレジリエンスと信頼性は時間と共に改善されていくでしょう」と氏は述べている。

無線ネットワーク事業者による採用の第1波ではあらゆる技術がそうであるように、クラウドも多くのリスクと未知の物事をもたらしているものの、こうした課題を早くに克服した事業者は競争優位を獲得できるとAlusha氏は言う。

Kelly氏の説明によると、音声やデータなどの大衆向けサービスではネットワークインフラにおけるクラウドの役割が拡大していることで通常と異なる問題が起きることはないと思われるものの、エッジやプライベートネットワークで運用するカスタマイズサービスについてはそれよりも大きな課題になるという。

「遅延の影響を受けやすいクリティカルなアプリケーションがとても重要です。また、これに関連してバリューチェーンのプロバイダーやサプライヤーは接続サービスのSLAの領域をはるかに超えた責任を問われ、賠償請求の増加に直面する可能性があります」

 

通信事業者が直面しているクラウドの問題

モバイルネットワーク事業者はリスクに直面することに慣れており、通信業向けクラウドサービスがレガシーインフラを侵食していっている今、その経験が有利に働く可能性がある。

Alusha氏の説明によると、通信事業者は自社の市場ポジショニングや成長戦略に合わせて、マルチクラウドやハイブリッドクラウド等のさまざまなクラウド戦略の有効性を評価する必要があるという。「現行のシステムやプロセスの構造を変えて望ましいものを増やし、望ましくないものを減らすに当たっては、他の選択肢として競合クラウドプラットフォームも視野に入れ、両賭けしておくべきです」と氏。

このため、企業や通信事業者には複数のクラウドプロバイダーやサプライヤーと関係を構築し、維持する義務が発生しているとKelly氏は言う。また、「ネットワークスライシングのような技術は影響を限られた範囲に隔離し、冗長性を確保するのに役立ちます」と氏は言う。

通信事業者の技術責任者たちは今月のAWSの障害に注目したことと思われるが、モバイルネットワークのクラウドへの移行が非常にゆっくりしたものだということと、重要インフラに必要とされる制約の多さに安心もしたことだろう。こうした懸念の多くは、パブリッククラウドが99.999%の信頼性を保証できるようになるまで続くと思われる。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/aws-outage-stresses-telco-cloud-challenges/2021/12/

Matt Kapko
Matt Kapko Senior Editor

Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

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Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

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