AWS、通信分野における生成AIの役割に注目
生成AI(ジェネレーティブAI)は、それが何であるか、何ができるかをまだ十分に理解されていないにもかかわらず、業務モデルを根底から変えながら、前例のないスピードでテック業界を席巻している。この不確実性は、変化に関して慎重な歴史があり、生成AIによる変化を採用するプレッシャーに最も直面していると思われる電気通信分野にとって、とりわけ大きな課題となっている。
コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニー(Bain & Co.)は、最近の報告書でこの問題を取り上げ、このチャンスに乗じて事業者は迅速に行動する必要があると述べている。
「ここではスピーディな行動は、完璧な計画に勝ります」とHerbert Blum(ハーバート・ブルー)氏、Jeff Katzin(ジェフ・カッツィン)氏、Velu Sinha(ヴェルー・シンハ)氏の3人は、この報告書の中で述べている。「通信事業者にとってより重要なのは、自社の戦略に合った生成AIアプリケーションの導入計画を迅速に策定し、責任ある方法でそれを実行していくことである。そうしなければ、この急速に進化する分野におけるチャンスを逃すリスクがあります」
マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Co.)は別のレポートで、AIがビジネスリーダーの優先事項を明らかにしたと説明している。経営トップがAIイニシアチブを率先して推進している組織を例に挙げ、そのような組織には資金を提供する必要があることを述べている。これは、AI計画に関する明確な指示がなく、無駄な支出や開発の停滞につながっている組織とは対照的である。
「そのようにAIを成熟させるのは容易なことではありませんが、通信事業者にとっては手の届く範囲であることは確かです」と同社は述べている。「実際、彼らが直面するあらゆるプレッシャーを考えると、AIの本格的な導入を受け入れ、AIネイティブな組織へと移行することは、さらなる成長と発展を促すカギとなる可能性があります。このことが交渉の余地がないことを認識し始めている通信事業者は、テクノロジーによって生み出されるビジネスインパクトが具体化するにつれて、AIへの投資を拡大しています」
通信事業者が生成AIを取り入れる方法
AWSの通信業界担当チーフ・テクノロジストであるIshwar Parulkar(イシュワル・パルルカール)氏は、通信事業者が生成AIの利用について関心を持つであろういくつかの分野を挙げた。
最初に挙げたのは、カスタマー・エクスペリエンスの向上に関する一般的なものだ。これには、その顧客とのやり取りを改善し、将来的に顧客の解約を減らすのに役立つ機械学習(ML)の活用が含まれる。
「我々は、数社の主要な顧客と協力し実際にこれを実装しました。顧客の音声通話を受け、それをテキストに変換し、感情分析を行い…そして、それを離反顧客の減少につなげることができます」とParulkar氏は言う。「生成AIを利用すれば、チャットボットや、カスタマーケア・エージェント・システムの通話だけでなく、顧客に対してもよりインタラクティブなインターフェースを提供することができます。つまり、生成AIは更にその上をいっているのです」
次のステップは、事業者が事業運営やシステムを強化するために生成AIを活用することだ。これは収益保証や収益漏れの発見につながるもので、Parulkar氏は「機械学習で何ができるかという点では、より確立された分野です」と述べている。
しかし、より大きなチャンスは通信事業者がネットワーク・運用をより適切に設計・管理できるようにすることにある、とParulkar氏は述べた。まだ最も未成熟な分野だが、彼が “最も期待を寄せている” 分野のひとつである。
これは計画および設置の段階から始めることができる。例えば、技術者が物理的な機器を設置する際に支援をするという例が挙げられる。
「従来のネットワーク機器の設置作業では、技術者がマニュアルを見ながらルーターや基地局を設置し、リンクやファイバーを接続する手順を踏んでいました」と氏。「チャットボットや自然言語フレームワークを使うことで、そのすべてを対話的にできるようになります。大量のドキュメンテーションやトレーニングデータを利用して、基礎モデルを訓練することで、そのようなインターフェースを作成することができます。これにより生産性が向上し、展開したい具体的な問題に対し、迅速に対処することが容易になります」
また、大規模なデータセットを使ってネットワーク構成を自動生成することもできる。これには、ネットワーク・パフォーマンスをサポートするためのルーター、VPN、MPLS回線の設定を支援する機能も含まれる可能性がある。
展開されたネットワークの運用においても、サポートの最終領域として、Parulkar氏は故障のトラブルシューティングなどの機能を挙げ、生成AIモデルによってサポートできる可能性があるとした。
「故障のトラブルシューティングと対応を実施するための手順がオペレーターにはあります。多くの場合、試行錯誤を繰り返し手順を作成するという方法を採用していますが、より対話的で自然な言語のプロンプトベースのシステムによって、ネットワークのトラブルシューティングと運用を案内することで、その作業を大幅に改善することができます」とParulkar氏は述べている。
このモデルは、モバイル・エッジ・コンピューティング(MEC)、プライベート・ネットワーク、ミリ波(mmWave)スペクトラム帯域の使用など、より多くのルーターを統合して細分化された5Gネットワーク・モデルをサポートする通信事業者にとって、特に魅力的なものになるだろう。
米連邦通信委員会(FCC)のJessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォーセル)氏委員長も今週、スペクトラムリソースの管理にAIが役立つことを示唆した。
Jessica Rosenworcel氏は、今週のFCCと全米科学財団のジョイント・ワークショップのスピーチで、「何十年もの間、私たちは電波の大部分を免許制にし、他は免許制にしない共同利用政策を考えてきました」と述べた。「しかし、このスキームは真にダイナミックなものではありません。携帯電話の世界から、モノのインターネットにおける何十億ものデバイスの世界へと移行するにつれて、電波に対する需要が高まるにつれて、私たちは新たに発見された認知能力を活用し、無線デバイスが自ら送信を管理するように教えることができます。AIを使ったよりスマートな無線機は、中央当局があらゆる環境における周波数帯域の最適な利用法を指示することなく、互いに協力し合うことができます。遠いことのように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。大規模な無線プロバイダーのネットワークでは、毎分数百万のパフォーマンス測定値が生成されることを考えてみてください。そして、機械学習がネットワークの利用状況をよりよく理解し、周波数帯域の効率化をサポートするために提供できる洞察を考えてみてください」
生成AIには可能性があるが、Parulkar氏は「伝統的AI」と呼ぶ「教師あり学習」と「教師なし学習」にも門戸を開いている。
Parulkar氏は、「これらの技術は、ネットワーク内の多くの部分でまだ機能しており、これら2つの組み合わせが見られます」と述べた。「例えば、異常検知を使用し見るべきものについての洞察を得てその後、生成AIシステムを使用し非常にインタラクティブな形式で出力を与えることができます。これは、通信事業者が探求すべき大きな分野だと思います。私たちは、複数の通信事業者やネットワーク・ベンダーと積極的に話し合っています」
AWSは生成AIで忙しい
AWSが生成AIプラットフォームのアップデートに躍起になっている中、Parulkar氏のコメントが発表された。最も最近のものの1つは、1億ドルのGenerative AI Innovation Centerの立ち上げであり、これは、生成AIツールの開発、構築、導入のプロセスを通じて企業を支援することを目的としている。
「生成AIは、何らかの形で世界中のすべての組織に影響を与えるでしょう、私たちが初期段階にある技術シフトのひとつです」。AWSの生成AI担当シニアリーダーであるSri Elaprolu(シュリ・エラプロル)氏は米SDxCentralの取材で語った。「当社はできる限り多くの顧客を支援し、生成AIによって各社の取り組みを加速させるという目標を掲げています。それが当社の義務でもあります」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。
SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
Twitter:@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。
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