AWS、下水処理水を持続可能なデータセンターの冷却に利用
アマゾンウェブサービス(AWS)は100を超えるデータセンターを所有しているが、そのうち20か所で、AWSクラウドを構成するサーバ群の冷却水として下水処理水(再生水とも呼ばれる)のみが使用されている。同社で水の持続可能性を担当する責任者、Will Hewes(ウィル・ヒューズ)氏は、「人は常に排水を生み出しています」と話す。「これを利用することで、地域社会で使える水が増えれば、気候変動への適応、レジリエンスの面で大きな恩恵があります」とSDxCentralの取材で語った。
Hewes氏は、連邦政府の水政策や改革、気候変動への適応、水インフラへの融資など、数十年にわたり水分野に取り組んでいる。現在はAWSに所属、ウォータースチュワードシップ(水資源管理責任)の推進と、2030年までに同社のデータセンターが消費する以上の水を地域社会に還元する戦略を担当している。
データセンターの冷却以外に再生水の使い道はそれほど多くはない。データセンターを最適な温度に保つために飲料水を消費するよりも、「可能な限り再生水を使用したいと考えています。きれいで良質な水を他の用途に残しておくためです」と氏は言う。「地域の水供給のレジリエンスも高まります」。同社は今後数年間で、データセンターでの再生水の利用を拡大していく計画だ。
水への責任=世界各地での取り組み
AWSのウォータースチュワードシップへの取り組みは2020年に始まり、データセンター内でのプロジェクト、データセンターがある地域社会でのプロジェクトがさまざま行われている。後者については16日、6つのプロジェクトが新たに発表された。「これらの水還元プロジェクトは、その地域で最も必要とされているやり方で、地域社会に水をお返しするものです」とHewes氏。
そのうちの1つが、スペインのアラゴン州サラゴサ県にある自治体、ビジャヌエバ・デ・ガジェゴでのプロジェクトだ。AWSはここでデータセンターを運営しており、スペインが世界で最も水ストレスの高い工業国のひとつであることから、AWSを利用したクラウドベースの漏水検知サービスを提供しているFIDO Tech社との協働で、水の損失を低減するプロジェクトが始まった。「ウォータースチュワードシップの計画には、クラウドなどAWSとして最も得意とする要素を組み込んでいます」と氏は言う。
企業によるウォータースチュワードシップ・プロジェクトが実際に成果を挙げて完了するのを氏が目にしたのはこれが初めてだという。世界の水道システムでは平均して30%の水が漏水によって失われており、水の処理・輸送に伴うCO2排出量も少なくない。「気候変動への適応と緩和、どちらの面から見ても成果を上げやすい部分であり、対処すべきことでもあります」と氏。「世界でも大きな課題です」
ところで、AWSがスペインで水の損失の問題に取り組んだプロジェクトを注目すべきものにしているのは、その際に取った方法だ。「当社は資金を提供しているだけではありません。当社がグローバルに運営している(クラウド)プラットフォームをベースに構築された、各種のツールも(プロジェクトでは)使われています」と氏。同社によるクラウドベースのテクノロジーとFidoの音響センサーで漏水の発生箇所を特定、漏水の規模による優先順位付けを行った。
Fidoのセンサーは磁石でもあり、2022年11月から同地域の水道管やメーターに取り付けられ、これまでに21件の漏水が検出されている。年間で約3300万リットルの損失低減になった。AWSによれば、それには優先順位を付けられることも役立っているという。「どこの水道事業者にも、水道システムの漏水を1つ残らず修理するほどの資金はありません。こういったデータがあれば、自組織や地域社会にとって最も大きな改善になる箇所に優先的に着手することが可能になります」
「水は貴重です。水道システムの漏水の発見・修理にテクノロジーを利用すれば、地域のためのお金、時間、水を賢く節約することができます」。ビジャヌエバ・デ・ガジェゴの首長、マリアーノ・マルセーン氏は述べている。「注意すべき場所を把握し、最も大きな漏水箇所から修理することで、最大限の節水ができ、修理作業による街への影響も最小限に抑えることができるのです」
AWSの水還元プロジェクトはオーストラリア、インド、インドネシア、米国でも実施されており、全体で15億リットルの水の節約を見込んでいる。また、これまでの水還元プロジェクトを含めたポートフォリオ全体では、年間で推定39億リットルが地域社会に還元されることになる。
AWS turns sewage into sustainable data center cooling
SDxCentral のレポーター。データセンターのテクノロジーとビジネス ケース、環境の持続可能性、クラウドネイティブ エコシステムを担当。エマは愛犬コビーとデンバーに住み、世界一の散歩を一緒に楽しんでいる。
連絡先:echervek@sdxcentral.com
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