Broadcom VMwareで顧客の契約移行が進む=AI事業にも好影響となるか

米Broadcomが第1四半期の決算を発表した。統合を進めていたVMware事業については、すでに大口顧客の大半が主力製品の「VMware Cloud Foundation」(VCF)を契約済みだとしている。とかく物議を醸した構成変更も浸透してきているようだ。AIの導入が急速に拡大していることもあり、さらなる成長を目指す基盤が整いつつある。
同社が投資家に説明したところによると、上位顧客10,000社のうち70%がすでにVCFを契約済みだという。決算説明会でCEOのHock Tan(ホック・タン)氏が語った。前四半期末の時点では4,500社という説明がされていたことから、大幅に数字が伸びていることがわかる。
前回の四半期決算では受注状況について触れていた。受注自体もCPUコア数で2,100万個分を計上し、前々四半期の1,900万個分から伸ばしたが、それ以上に重要なのが、新たに受注したコアのうち、70%がVCFで使用されることだと説明している。VCFは「データセンター全体を仮想化する」プラットフォームとなっている。
VMwareの移行が進んでいるが、Broadcomによる変更の影響はこうした大口顧客のみならず、広範に広がっている。業界は今もその影響を乗り越えようと努めている最中だ。
この1年、価格とライセンスの変更を嫌った顧客はVMwareから流出するということを調査会社や競合他社が何度も指摘しており、実際にもそうした動きが起きている。一方で、このところはBroadcomが大口顧客の引き止めに成功しているという論評も見られるようになった。
VMwareの今後については、最近、BroadcomのPrashanth Shenoy(プラシャント・シェノイ)氏がSDxCentralの取材で説明している。同社でクラウドプラットフォーム/インフラ/ソリューションのマーケティングを担当するバイスプレジデントだ。2024年は製品と価格モデルの刷新に追われて目まぐるしく過ぎ去ったが、今年は「加速・導入」の年と位置付け、これまでの成果を受けて勢いに乗ろうとしているという。
「昨年はきれいに整理をする年でした。市場投入ルートや提供サービス、製品を整理して、シンプルなものにしています。方向性を定めて信頼を構築し、製品構築を行いました」。VCFのアップデートについてはこのように語った。「今年はつつがなく導入ができるように、無事に利用できるように、高度なサービスがすべて確実に動くように、パートナー企業や市場投入ルートの態勢も万全にしていただけるように、といったことに取り組んでいく年になります」
VCFの運用化が進めば、同社が2023年にリリースした「VMware Private AI Foundation」で提供しているAI関連の事業全般に寄与する可能性もある。
「大企業がAIを採用する場合、AIワークロードを(オンプレミスの)データセンターで実行する必要があります。GPUサーバーを使用するケースと、従来のCPUで処理するケースの両方があるでしょう」。直近の決算説明会で、同プラットフォームについてTan氏が説明している。「VCFはCPUを使用している従来型のデータセンターの仮想化に使われますが、それと同じように、GPUを仮想化して共通基盤で使用することができます。顧客はAIモデルをインポートして、(オンプレミス環境にある)自社の独自データを扱うことが可能です」
同プラットフォームを利用している顧客は39社に上ると補足している。
インテルの一部事業を買収するには余力不足か
決算説明会では、VMware事業の統合がうまくいっている様子であることを踏まえた質問も出た。Broadcomがさらなる買収への意欲を見せているという噂があるとして、Tan氏に実情を尋ねたものだ。
「ちょっとその余裕はありません」と氏。「今の時点では、AIとVMwareで手一杯です。現時点では考えていません」
Broadcomは、苦境に陥っている半導体大手インテルの一部買収に向けた交渉を進めていると報じられている。Broadcomがインテルの半導体設計事業を買収し、製造施設をTSMC(台湾積体電路製造)が買収する可能性があるというものだ。
前回の決算説明会で、Tan氏は「大型」買収を行うには十分な手元資金がないと述べている。一方で、事業買収の機会があれば常に検討に応じるとも語った。
氏の説明によると、Broadcomは「十分に大きな企業を買収する」という戦法を取っているという。そうするには手元資金が「十分にはない」状況だとした。とはいえ、可能性がないわけではないとも補足している。
「検討には応じます。現在のような状況でもそうですし、いつでもそれは同じです。この10年というもの、事業買収は当社の戦略、当社の事業モデルの中核部分をなしてきました。ですので、当社は優れた“フランチャイズ資産“をポートフォリオに加えることには常に関心を持っています。当社の求める基準はかなり厳しいものですが、それを満たしているのであれば、半導体であれ、インフラソフトウェアであれ、資産を獲得してポートフォリオに加えることには今後も常に検討の余地があると考えています」
Broadcom自体、すでに半導体エコシステムに深く根ざしている企業だ。AI関連の商機が拡大するなか、それを狙っているという意味ではインテルと同じ立場にある。前回の決算説明会では、この領域でどういった位置に付けているかについてもアピールしている。
2024年第4四半期のAI関連売上高は、前年同期比220%増の122億ドルに達した。Tan氏によると、伸びたのはカスタムAIアクセラレーターとネットワーキング事業だという。また、四半期半導体売上高の41%をAI関連が占め、通期半導体売上高は過去最高の301億ドルに達した。
さらに、向こう数年間はAI関連が半導体事業の主力になる見込みだとしている。提携しているハイパースケーラーが独自のAIインフラに多額の投資を進めており、BroadcomのXPUアーキテクチャに大きく依存しているためだという。
「顧客のハイパースケーラーのうち、AI向けのXPUを独自に、複数世代にわたって展開するロードマップを定めているところが現在3社あります。ペースはさまざまですが、向こう3年の間に展開されることになります。2027年には各社ともファブリック全体に多数のXPUクラスターを展開する計画だろうと思われます」
この結果、2027年までに、BroadcomのTAM(獲得可能な最大市場規模)は最大で900億ドルに拡大する見込みだ。
「今後の状況としては、半導体事業の中でもAI関連の領域が急速に成長し、その他の領域を追い抜いていくことになります」と語った。
株式調査会社ウィリアム・ブレアの調査レポートには、BroadcomがGoogle、Meta、Bytedanceにカスタムチップを提供していること、ハイパースケールインフラを必要としている新規顧客を2社獲得し、共同で検証を進めていると示唆したことが書かれている。ウィリアム・ブレアはこの2社をOpenAIとAppleではないかと考えているようだ。
「BroadcomがAI事業で顧客と協力している件について述べた内容は、総じて当社の主張を裏付けるものでした。中でも重要な点として、投資家からはスケーリング則や事前/事後学習の計算リソースに関する懸念の声が聞かれるものの、最大手のハイパースケーラーは向こう数年間かけてAIクラスターを拡張する計画を着々と進めているということが挙げられます」と述べている。

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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