デロイトが2024年のトレンドのトップを予測=生成AI、特化型コンピューティング、産業用メタバース

次の大きなテクノロジーを追いかけるのは、少年サッカーの試合を見るのと少し似ているかもしれない。
全選手がボールの周りに集まり、懸命にボールに手(というより足)を伸ばす。でも、もし取れたとしても、それをどう使っていいのかわからない。
ほんの1年前にChatGPTが登場して以来、スポットライトを浴びるようになった生成AIが、このことを示している。あらゆる種類、あらゆる規模の企業が生成AIについて話し、使いたいと考えているが、どこで、どのように使うかは必ずしも決まっていない。
そこで、デロイト(Deloitte)が6日に発表した、第15回年次レポート「Tech Trends」で警告しているように、新しく魅力的なテクノロジーを使用する場合は、慎重かつ目的を持って行動していくことだ。
デロイトのチーフ・フューチャリストであるMike Bechtel(マイク・ベクテル)氏は、SDxCentralに次のように語っている。「基礎をきちんと固めずに、話題になっている何某かの次世代テクノロジーに軽率に飛び込んでいくのは愚の骨頂で、まるで砂上の楼閣を建てるようなものです」
同社の主要レポートでもある同調査では、特化型コンピューティングから技術的健全性まで、最高幹部や技術リーダー、取締役会が今後の18~24ヶ月間注目すべき、いくつかのトレンドが示されている。
「真っ当なフューチャリストであるためには、歴史家であることです。我々がどこに向かっているのか、過去を振り返ることで理解するのです」と氏は語った。自分の「チーフ・フューチャリスト」という呼称については、「実質的な仕事は新興テクノロジーの研究開発ですが、魅力的な肩書きが付けられています」と説明している。
「今年のレポートでは、世界中の私たちのクライアントが、魅力と実質とをどのようにして両立させようとしているのか、そのすべてを紹介しています」
生成AIには「魅力的な要素」があるが、実装は賢明に
レポートでは、最高幹部、技術リーダー、取締役会が今後の18~24ヶ月間注目すべきいくつかのトレンドを挙げている。
生成AI、空間コンピューティングと産業用メタバース、総当たり計算の先にある特化型コンピューティングへの移行、(DevOpsから)DevEx(開発体験)への進化、革新的な攻撃手法に対するセキュリティの確保、技術的負債から技術的健全性への漸進的変化などだ。
まず、今年が生成AI一色だったというのは驚くことではない。デロイトのクライアントはこのテクノロジーを成長促進剤として利用しようとしており、「高い目標のためのロケット燃料(推進力)」と考えていると氏は言う。
「生成AIのおかげで、より少ない人数で同じ仕事ができるとわかれば、すぐに起きてくる動きです」と氏は言う。
それでも、氏は、現時点で最も注目されているテクノロジーに過度に焦点を当てすぎないことの重要性を強調した。
「あらゆる新しいもののことで忙殺されているギークの話をお聞きください…新しいものは常にあります」と氏。ERP、IoT、ビッグデータ、クラウドなどの革新的なテクノロジーが過去にも出現したことを指摘した。「皆の注目を集める名ソリストは常にいます。しかし、ソリストはオーケストラなしでは機能しません」
生成AI は「魅力的な要素」を持っているが、実用的に使うには、シンプルでユーザーフレンドリーなインターフェイスと、偏りのない、高品質で信頼性の高いデータが必要だ。AIでは、古い格言にあるように「ゴミを入れればゴミが出てくる」どころではなく、「ゴミを入れればゴミが2乗される」のだという。
「生成AIを使うなら、データの改良を余儀なくされます」と氏は言う。「生成AIは輝く魅力を持つ部分ですが、実質部分によって土台や側面から支えられているのです」
メタバースは逃避から昇華へ
もう一つ、新たな人間とコンピュータの相互作用が台頭し始めているという。メタバース技術が成熟し、「驚くべき新しい場所で、実用的で戦術的な次世代インターフェイスとして」熟利用され始めていることだ。
例えば、産業用途での拡張現実(AR)および仮想現実(VR)ツールの利用、デジタルツインの構築などだ。
メタバースに関する議論論は、生成AIの突然の出現により、止まったように見えたが、「空間コンピューティングが現実的に有望な技術であることに変わりはありません」と氏は言う。
現場作業員は、スマートグラスのような拡張デバイスをますます利用するようになってきている。例えば、ヒョンデはデジタルツイン技術を活用し、物理的にコンクリートを流し込んだり、数百万ドルの機械を動かしたりする前に、バーチャルで構成を評価している。
より一般的な企業用途に関しては、2024年に店頭に並ぶと予想されるApple Vision Proのような新しいイノベーションを挙げ、この複合現実ヘッドセットが利用可能になれば、生成AIからある程度注目を奪うかもしれないと氏は述べた。
同氏は「トースターを顔にかぶせてオフィスに行きたい人はいない」と述べつつ、Apple Vision Proなどのテクノロジーは、ついにはカセット、次にCD、それからiPodに取って代わられた8トラックカートリッジと同じように、第1世代の製品であると述べた。同じ様に、ヘッドセットはスマートグラスやコンタクトに取って代わられ、最終的にはブレイン・コンピュータ・インターフェイスに取って代わられるという。
「『メタバース』という言葉には、現実世界は退屈だから、偽物の世界でぶらぶらしようという逃避の意味が込められています」と氏は語った。しかし、産業界では、メタバーステクノロジは「脱出というより昇華なのです」
総当たり計算からの脱却
過去50年間、ムーアの法則により、多くの企業は先延ばしをしてきた。Bechtel氏の言うように、「アーキテクチャが気に入らない場合は、2年待てば、より安くて速くなるだろう」という考え方だ。
しかし、仮想化、並列化、クラウドへの移行の増加は変曲点を迎えている。「リフト&シフトの戦略はもう役に立ちません」と氏は言う。
その結果、組織は「(汎用コンピュータによる)総当たり計算から、より無駄のない、より効率的で整然としたコードと特殊用途のアーキテクチャ」へと移行しつつある。
例えば、コードベースを最適化してパフォーマンスを向上させたり、AI のトレーニングに特化したハードウェア(GPU、AIチップ、そしていずれはコンピューティングの次の時代を特徴付ける量子コンピュータやニューロモーフィックコンピュータなど)を活用したりする。
簡単に言えば、最大限の利益を確保するためには、タスクを適切なテクノロジーに委任する必要があると氏は主張する。
プロセスだけでなく、人をサポートする
アプリやその他のテクノロジーを迅速に提供するために、企業はますますDevOpsプロセスを採用することが増えている。しかし、これは開発者の負担になることがよくある。
そのため、デロイトはDevOpsから”DevEx”と呼ぶものへの進化を予測している。つまり、ソフトウェアエンジニアの日々の生産性と満足度の向上を目指す、開発者ファーストの考え方だ。
「開発者とエンジニアは異なる種類の従業員であり、異なる動機やモチベーションを持っているという認識です」と氏は述べる。
そのため、企業は煩雑な手続きやサイロ化を解消し、開発者の作業スピードを上げるためのプラットフォームやアーキテクチャを導入し始めている。また、継続的な学習やキャリア開発の機会を提供するところもますます増えている。
「企業は開発者と従業員エクスペリエンスを第一級の関心事として扱っています」と氏は述べる。
セキュリティを強化し、「健全性チェック」を行う
企業の強さはサイバー防御と社内の健全性が不足していると損なわれるため、デロイトの研究者らは、サイバー防御と「技術的健全性」への注目が高まると予想している。
AIツールは組織を保護する上で重要な役割を果たしてきたが、現在では悪質な行為者もそれらを利用することができ、音声や顔認識へのアクセスを回避できるディープフェイクや、「誰もが騙される可能性がある」フィッシング攻撃などのコンテンツを作成していると氏は述べている。
「文字通り、自分の目と耳を信頼できなくなったとき、私たちは何をすべきでしょうか」と氏。
生き残るために、組織はポリシーや高度なサイバー防御ツールを導入し続けることになる。「現実そのものが脅威にさらされ始めたとき、それが次のフロンティアです」と氏は語った。
同じ様に、デロイトは技術的負債から、少しずつ全体的な技術的健全性へと移行していくと予測している。
「技術的負債と聞くと、憂鬱な気持ちになりますし、悲観的に聞こえます。負債を抱えていて、考えたくもないのです」と氏は語った。
しかし、2024年は、企業が定期健康診断を受けるのと同じように、「予防的健全性評価」によってこの問題に取り組み始める年だ。
これにより、技術的負債を解消する取り組みは、「年に一度の愚痴の元」から、組織の日常的な習慣の一部へと変わっていくと氏は述べた。
「古い部分を微調整して新しいものにしていくために、いつもほんの小さな作業をするようなものと考えてください」
Deloitte predicts genAI, specialized computing, industrial metaverse will top 2024 trends


JOIN NEWSME ニュースレター購読
月に1回、newsMEのトピックスをメールで配信しています!
登録解除も簡単です。ぜひお気軽にご購読ください
KCMEの革新的な技術情報を随時発信
5G・IoT・クラウド・セキュリティ・AIなどの注目領域のコンテンツをお届けします。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
RELATED ARTICLE 関連記事
-
IT StringerAI2025.02.06
Cloudflare、画像の信頼性を追跡し、作成者の帰属を保持するワンクリックコンテンツ認証を発表
コンテンツデリバリネットワークやインターネットセキュ…
-
セキュリティ StringerAI2024.12.25
NTTレポート、2025年に向けた世界のサイバーセキュリティの主要トレンドを明らかに
日本電信電話株式会社(NTT)は、2025年までにサ…
-
IT Dan Meyer2024.12.20
VMwareからの移行にはどのくらい時間がかかるのか
Broadcomは新たにVMwareの親会社となった…
-
人工知能(AI) Chris J. Preimesberger2024.12.20
AWSとNVIDIA、生成AI開発で提携強化=開発者に新たな選択肢
25年ほど前――2000年頃のIT開発の世界では、マ…
HOT TAG 注目タグ
RANKING 閲覧ランキング
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2024年における10のネットワーキング技術予測
-
IT Dan Meyer
BroadcomによるVMware製品の価格/ライセンスの変更がどうなったか
-
IT Dan Meyer
ネットワーキング業界の混迷、顧客の懸念=HPEとジュニパー、シスコをめぐって
-
ネットワーク Dan Meyer
シスコ、トランプ政権のブロードバンド計画に備える
-
IT Dan Meyer
シスコが「堅調な」滑り出し=1Q決算、AIとSplunkが後押し
-
セキュリティ Nancy Liu
SASE市場が急成長=第1四半期、首位はZscaler
-
スイッチング技術 Tobias Mann
コパッケージドオプティクスの実用化は何年も先=専門家談
-
IT Dan Meyer
BroadcomがVMwareパートナープログラムの詳細を発表
-
データセンター Emma Chervek
マイクロソフトとOpenAI、15兆円規模のAIデータセンターを計画=NVIDIA依存を軽減
-
データセンター Dan Meyer
世界のデータセンター事情=ハイパースケーラーに容量が集中していくのはなぜか