ドコモとAWSがオープンRANで提携
NTTドコモが全国に展開している5GオープンRANにアマゾンウェブサービス(AWS)を利用し、ハイブリッドクラウド環境で実行する。次世代のオープンな通信アーキテクチャとクラウドハイパースケーラーの結びつきがさらに強まりそうだ。
NTTドコモはAWSが提供するコンテナ管理プラットフォーム「EKS Anywhere」を使用して5GオープンRANシステムをホストする。EKS Anywhereは現在利用しているAWSやオンプレミス環境で実行でき、単一のコンソール画面からデプロイメントの管理ができる。今回のケースでは、クラスタ管理の自動化とさまざまなAWSリージョンで実行されているAWSサービスの統合に利用する。
AWSは1月、150億ドルを投じて東京・大阪リージョンの既存インフラを拡張する計画を発表した。「AWSの経済効果に関するレポート(日本)」によれば、AWSによる日本への投資額は2027年までに255億ドルに達し、国内総生産(GDP)に400億ドル近く貢献し、年間平均で3万人を超える雇用を創出するという。
オープンRAN導入をシンプル化
AWSはNTTドコモの「OREX」ソリューションにも参画する。ネットワーク事業者向けにオープンRANの検証済みコンポーネントをカスタマイズ可能なパッケージにしたもので、RANやNFVのMANO(Management and Orchestration)、サービス群を提供する。
昨秋開催のMWCラスベガスをSDxCentralが取材した際に、ドコモのオープンRAN事業のグローバル責任者を務める安部田貞行氏が語ったところによると、OREXはオープンRANの導入が簡単になるように作られているという。導入に伴う統合、電力消費とパフォーマンスのバランス、オープンRANエコシステムの運用などに関する課題を解決するとした。
立ち上げ時のベンダーパートナーは13社で、AMD、デル・テクノロジーズ、富士通、ヒューレット・パッカードエンタープライズ(HPE)、インテル、マベニア、NEC、NTTデータ、NVIDIA、クアルコム、レッドハット、VMware、ウインドリバーが名を連ねている。
先月26日にはNECとも提携を拡大し、同社を商用5Gネットワーク向け仮想化基地局(vRAN)ベンダーの1社に選定した。NECはこれまで、ドコモの4G商用サービス向けにvEPCを、5GCに仮想化技術を提供している。
AWSの通信向け事業の進展
今回の提携の土台には、AWSの通信向け事業の進展がある。
最大の事例はおそらく、米Dish Networkのクラウドネイティブな5Gネットワークを支える基盤として使用されていることだろう。
AWSで通信向け事業とエッジクラウド分野のCTOを務めるIshwar Parulkar(イシュワール・パルルカー)氏が昨年、SDxCentralの取材に応えている。通信事業者のネットワークを実行する上では、一般的なクラウドワークロードとは別種の課題があることがわかったと語った。
「パケットコアのワークロードは、当社のクラウドで実行している他のワークロードとは別種のものです」と氏。「これを実行するためには、クラウドネットワーキングをどう改善できるか、パケット処理に必要な性能が一部足りていないところをどうやって強化するかを考えなくてはなりませんでした。これは長い道のりで、この2、3年は、そうしたワークロードをクラウドで実行可能にするためだけに費やしています」
具体的な話として、クラウドは「コンピューティング能力とストレージに大きく依存し、ネットワーキングは(シンプルでも)繋いでくれればよい」というものだと指摘した。「つまり、インターフェイスは1つでIPは1つか2つであるとか、そういった状況です」
「ネットワーキングのワークロードはその逆です。計算はごくシンプルなものです。パケットコアを見れば分かりますが、インスタンスは数個で、大量の計算が必要というものではありません。ですが、ネットワーク側が複雑でした。システムには大量のデバイスが接続するため、さまざまなネットワークインターフェイスと無数のIP(アドレス)が必要です。そのため、当社のインフラサービスの一環として、それを担うものを構築する方向に考え方を変えなくてはなりませんでした」
通信事業者をハイブリッドクラウドへ
先日、ある記者会見で、AWSで通信事業部門のGMを務めるChivas Nambiar(シーバス・ナンビア)氏が、ハイブリッドクラウドアーキテクチャの利用を検討している通信事業者各社と協議を進めていると語った。その内容は、着実に進展しつつも的を絞ったものになってきているという。
「こうした協議の多くがデータに関する話題に集中し、当社のデータ保護がどうなっているか、データへのアクセス保護はどうかというものになっています」と氏。「過去にAWSと協業したことのある通信事業者は、当社のデータ保護がどのようなものかを大変深く理解されています。当社はデータにアクセスできませんし、他の誰にもできません。データは事業者ご自身の管理下に置かれます。当然ながら、各社はこの点に関して慎重な姿勢です。(中略)国家レベルの重要なインフラだからです。ですが、(中略)見合ったユースケースがある場合には前に進めてもよいということですし、当社としても速やかに対応したいと考えています」
氏はこうした取り組みが加速するとみている。「実際にデータを利用してネットワークに良い効果を与えるには、インテリジェンスを組み込む必要があるからです。そうした処理をクラウド上で行う動きが進むでしょうし、私としては、基本的にこうしたワークロードはオンプレミスに留まるよりも、クラウドに移行していくと考えています」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
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