Google Cloudが解約時の料金を無料に=AWSとMicrosoftは追随するか
Google Cloudがデータ移行時にかかるネットワーク転送料を無料化すると発表した。オープンで相互運用可能なエコシステムを支持する意思決定であり、「制限的なライセンス」で「顧客を囲い込み、競争をゆがめている」Amazon Web Services(AWS)などのレガシークラウドプロバイダーに異を唱える。GM/VP兼プラットフォーム責任者のAmit Zavery(アミット・ザヴェリー)氏がブログで詳細を説明した。
Google Cloudから他社クラウドやオンプレミス環境にデータを移行する際のデータ転送は無料でできるようになった。とはいえ、他のハイパースケーラーによる制限的で不公正なライセンス慣行がなくなるわけではない。
Zavery氏は「一部のレガシープロバイダー」が「オンプレミスのソフトウェアを独占している」ことを利用し、制限的なライセンス契約を結ぶことでクラウドにも独占を広げていると非難した。契約には「複雑な網の目のような」制限があり、ユーザーは契約条件やライセンスで囲い込まれ、自社に適したクラウドプロバイダーを選べなくなっているのだと言う。
連携できるクラウドプロバイダーを制限したり、競合するクラウドを利用すると価格を5倍に引き上げたり、必需品のソフトウェアについて競合クラウドとの互換性を制限したり、マルチクラウド運用をタブー視するなどの反競争的な手法によって、顧客が支払うコストは300%近く高くなっているとした。
反競争的であるという懸念を払拭
Google Cloudの決定は一見意外に思えるかもしれないが、ハイパースケーラー各社に対して反競争的な価格設定をしているという批判があること、同社が2023年までに市場で2位に浮上するという約束をまだ果たせていないことを考えれば、青天の霹靂というほどではなくなる。
「Googleはこれまでも、他の環境に対して――パブリッククラウドでもオンプレミスでも、それ以外でも――最も友好的、協力的な対応をしてきました」。米調査会社Forresterのプリンシパルアナリスト、Tracy Woo(トレイシー・ウー)氏がSDxCentralの取材に対して述べている。「今回のことで、他のハイパースケーラー、AWSやAzureもクラウドからのデータ転送にかかるエグレス料金を廃止することになるかというと、私は疑わしいと思っています」
英国のクラウドインフラ市場では少し前に当局による調査が行われ、AWSとMicrosoftの利益率が驚くほど高いことから、「市場全体の競争が制限されている」ことがわかるとOfcom(情報通信庁)が判断している。
調査では、AWSとMicrosoftの2大プレイヤーが合計で70%~80%の市場シェアを占めていることがわかった。後を追うGoogleは、市場シェア5%~10%と後れを取っている。
また、エグレス料金、つまりクラウドからデータを移行するために顧客が支払う料金が、小規模なクラウドプロバイダーに比べて著しく高いことが明らかになった。顧客のマルチクラウドモデルを採用する意欲をそぎ、しまいには別のクラウドプロバイダーへの完全な移行をも妨げることになりかねない。
さらに、互換性や移植性といった技術面でも顧客は障壁を経験する傾向にある。つまり、異なるクラウド環境との互換性を確保するにはアプリケーションやデータを再構成しなければならないのだ。「このため、複数クラウドの異なるサービスを組み合わせたり、クラウドプロバイダーを変更したりすることがさらに難しくなっている」と規制当局は述べている。
一方、Google Cloudがエグレス料金を廃止したのは、企業ニーズが変化する中で、「クラウドには変化に対応できるだけの柔軟性があるべきだ」という考え方を支持してのことだと言う。
Zavery氏によると、今回の決定はレガシープロバイダーのライセンス制限に対する顧客の懸念を受けたもので、Google Cloudは今後も「当社のクラウドの顧客に代わって主張を続ける」意向だと言う。「顧客の選択の自由、クラウド市場の競争にとって真の障壁となっている制限的なライセンス慣行を終わらせるためには、さらに多くのことをしなくてはなりません」と語った。
Google Cloud waives exit fees, will AWS and Microsoft follow suit?
SDxCentral のレポーター。
データセンターのテクノロジーとビジネス ケース、環境の持続可能性、クラウドネイティブ エコシステムを担当。
エマは愛犬コビーとデンバーに住み、世界一の散歩を一緒に楽しんでいる。
連絡先:echervek@sdxcentral.com
X:@emmachervek
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