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文:Dan Meyer

Google Cloud利用に絞ったデータモダナイゼーション=テラス社の事例に学ぶ

Google Cloud利用に絞ったデータモダナイゼーション=テラス社の事例に学ぶ

カナダの通信大手テラス(Telus)がデータモダナイゼーション計画で大きな節目を達成した。パブリッククラウドをGoogleが、プラットフォームをOnixが提供し、膨大なデータ資源をいつでも移行しやすい状態で有効活用する。テラスの技術チームは2、3の要領をつかんだが、その内容は他社が同様のモダナイゼーションに取り組もうとする際にも役立つ可能性のあるものだ。

同社は2020年からデータモダナイゼーションに取り組み始めた。パブリッククラウド事業者3番手のGoogle Cloudと10年契約を結んだことによるもので、Anthosプラットフォームを利用してMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)サービスを運用するほか、基幹ITやネットワークインフラを同クラウドに移行する計画となっている。

今回達成した内容としては、オンプレミスのさまざまな場所に分散していたデータ資源をGoogle Cloud上の統合基盤に移行したことなどがある。データのパイプラインを改善し、サイロ化していたレガシーシステムから14ペタバイト超のデータを3年間かけてGoogle Cloudに移行した。

CIO(最高情報責任者)のJaime Tatis(ジェイミー・タティス)氏がSDxCentralの取材に応えて説明した。会社のあちこちに散在していた100以上のデータソースから顧客情報を集約し、Google Cloud上の中央データハブに移行したという。この過程でデータの精査を行ったところ、不要なデータを30%以上削減することができ、使用量あたりのコストや全体のエネルギー消費量が減り、関連データにアクセスしやすくなった。

同社は「手に余ることはしない」という目標をはっきり定めてプロジェクトに臨んだという。まずは財務的にもうまく行きそうなプロジェクトに集中したということだ。

「一気に大々的な変革をするようなやり方はしたくありませんでした。たいていうまくいかないからです」と氏。「モダナイゼーションに苦戦している他社の人と話をすると――というのは向こうから訪ねてこられるのですが――こういう風に聞かれます。『あのう、当社でも、もう5~6年も取り組んでいるのですが、完了には程遠い状況です。何が間違っているんでしょう』。そして、多くの場合、大々的な変更をしようとしているのです」

そうしたアプローチを取ると、全体の計画の中にモダナイゼーションが埋もれてしまうことがあるという。ことによるとそれよりもまずいのは、上層部にまで財務に関する不安が広がりかねないことだ。

「コスト評価を行う際に、得られる利益が非常に見えにくいのです」と氏。CFOにとっては難しい状況になりかねないという。「大金がかかっていることだけはわかりますが、コストを削減できるのか、事業ラインの売上が上がるのかわからないという状況になります」

テラスでは、最初のモダナイゼーション計画は財務面の成果を達成できる範囲にとどめたことでこうした課題を乗り越えた。「価値を提示して、CFOオフィスをはじめとしたあらゆるチームと連携し、それから先に進みました。長期での取り組みになります」

柔軟な変更、柔軟な管理がポイント

同社が数年がかりの取り組みを無事に終えるためには、柔軟性を保つことが重要だという。

「始めは2~3年の計画にしようと考えていたとしても、6か月で技術が変わり、台無しになってしまうこともあります」と氏。「6か月前には良い考えだったのに、状況がすっかり変わってしまったことに気が付くのです」

Tatis氏によると、テラスでは絶えず計画を変更していくサイクルに入ったという。計画については、それまでの成果を次にも生かせるような形で回していく必要があるとした。氏はこれを継続的モダナイゼーションと呼んでいる。

「今はモダナイゼーションが完了したところですが、かといって、2年、3年経った時にも、まだ最新の状態だと言えるかはわかりません。そのたびに発展させていかないといけません」と氏。

それには、新しい技術が登場した際にもそれまでの成果やシステムを簡単に移行できるような、柔軟なアーキテクチャが必要だ。

「継続的モダナイゼーションが可能になるような、柔軟なアーキテクチャと柔軟なコネクタが必要です」と氏。「後からほかに移行することが非常に難しくなるようなものを選択するとか、そういうものに根を下ろすようなことは避けた方が良いと思います。速やかに移行できるような製品やソリューションを利用することです」

テラスでは、たとえばアップグレードが簡単なGoogle Cloudのネイティブツールを利用している。「美点としては、Google Cloud側でアップグレード周りの面倒を見てくれることです。当社としてはわかりやすくなります」と氏。「アップグレードを取得すると、簡単に移行できる方法を用意してくれているので、業務がシンプルになるのです」

また、利用先をGoogle Cloudに絞ったことで、さらなる簡素化となった。アップグレード作業や継続的なデータ管理といった管理業務が全体として少なくなったという。

「利用しているソリューションの提供元を数えると、25社に上るという企業もあります。それでは管理が大変です」と氏。「複数の選択肢を確保するのは良いと思います。利用可能な中から常に最良のものを選ぶことができるでしょう。あくまで身軽でいられる程度にとどめ、好きなところに移行しようとするたびにレバーを25個も動かさなくてはいけないという事態を避けられるようにするのが良いと思います」

What did Telus learn from its Google-focused data modernization move?

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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