Intel社が「聖なる牛を屠殺」=製造をTSMC社、Samsung社に委託の可能性
米Intel社は、プロセッサの製造を外部に委託することを検討するため、半導体製造業者の韓国Samsung社および台湾TSMC社との交渉に入ったという。事情に詳しい匿名の情報筋の話としてBloomberg社が報じた。
とはいえBloomberg社によると、Intel社は2社との交渉に入ってはいるものの、次世代製造プロセスの歩留まりを改善できるという期待を抱いているという。報道によれば、交渉が成立した場合にいずれかのファウンドリで製造された部品が市場に出るのは早くても2023年以降で、現在利用可能な製造プロセス (おそらく4ナノメートル) によるものになるという。
この件が報道されたのは、Intel社がAMD社やArm系チップメーカー各社との激しい競争下にあり、また自社の投資家から戦略の変更を迫られるなかでのことだった。
物言う投資家のThird Point社がIntel社にサードパーティによる製造について調査するよう求める書簡を送ったことと関連づけるのは簡単だが、このニュース自体はそう驚くべきことでは全くない。2020年第2四半期の決算報告で、Intel社CEOのBob Swan氏は、
7ナノメートル製造プロセスの進捗が約12カ月遅れており、緊急時の対策として外部ファウンドリの利用を考慮していることを明らかにした。
なお、Intel社はハイエンドCPUの大部分を自社内で製造してきた一方で、外部ファウンドリの利用経験もある。昨年末に発表された同社初のデータセンターGPUは、外部ファウンドリを利用して作られた。
Intel社、現実路線へ
米調査会社Moor Insights and Strategy社の主席アナリスト、Patrick Moorhead氏によると、こうした交渉はSwan氏が第2四半期決算発表の際に触れていた緊急時対応計画の第1段階である可能性が高いという。
氏はSDxCentralへのメールで、「Intel社はTSMC社とSamsung社の両方に対し、将来的にバックアップ計画、増強計画としての役割を期待していると考えています。現実的ですし、(垂直統合型デバイスメーカーであるという)自社の戦略を損なうものでもありません」と書いている。「Intel社は間もなく分散アーキテクチャに対応しますし、現在でも各種のCPU、GPU、FPGA、ASICといった非常に多様なチップを持っています」
Moorhead氏は、現実的ではあるが、同社にとって前向きな1歩だとも話している。また、このような考えを持っているのはMoorhead氏だけではない。
米調査会社CCS Insight社の米州リサーチ担当シニアディレクターであるWayne Lam氏は、SDxCentral社へ宛てたメールの中で、「Bob Swan氏は、Intel社がどのようにビジネスを行うべきかについて現実的なアプローチを取ろうとしています」と書いている。
Lam氏によると、これまでIntel社のCEOの多くは製造側で育ってきた人物であり、自社製造を維持することに敬意を持っていたという。Swan氏はその型を破る。
「かつてSwan氏が聖なる牛を殺し――Intel社の工場のことですが――製造をアウトソースすると決めた時、同社にとって劇的な転換となりました」と氏は書いている。「現在、同社の製造能力は以前よりも競争の圧力にさらされています。数十年ものあいだ自社製造を続け、Intel製プロセッサ向けのチップだけを製造していたため、以前は競争とは無縁でした」
Lam氏によれば、極端紫外線リソグラフィ(EUV)などがIntel社の製造技術にとって課題となり、遅延が相次いだため、10ナノメートル、7ナノメートル、そして今では5ナノメートルプロセスによるチップをIntel社よりもはるかに先に展開している競争相手が同社を追い抜くのは時間の問題だったという。
「いったん後れを取ると、Intel社が追いつくのはますます難しくなっていきました。すべてのCPU製造は自社ファウンドリのネットワークに依存していたからです」と氏は書いている。Swan氏が舵を取ったことで、Intel社はこうした課題を克服するために外部ファウンドリを活用することにオープンになったという。
Lam氏は今後、Intel社が自社製チップの生産を縮小し、TSMC社に生産を委託すると予想している。
「TSMC社を活用すれば、(極端紫外線リソグラフィ)プロセスで抱えている製造のハードルを克服することができ、各種の新しいプロセッサを競争力のあるものにするために必要な改善が可能になります」と氏は書いている。
なお、Intel社は外部ファウンドリに目を向けた最初のチップメーカーというわけでは全くない。Lam氏はメールの中で、AMD社も少し前に同様の決定を下さざるを得なかったと述べ、同社にとっては結局良い結果となったと付け加えた。
TSMC社には用意がある
TSMC社は、新たに製造した4ナノメートルプロセスを使用してIntelチップを製造・提供する準備をしている。Bloomberg社が報じたところによると、Intel社が外部の製造業者との協力に進んだ場合、TSMC社は中国の宝山にある新しい工場を年内に稼働させ、生産段階に移行する可能性があるという。
Intel社は交渉が噂されていることについてコメントを避けた。Intel社の広報担当者はSDxCentralへのメールで、「当社は噂や憶測についてはコメントいたしません」と述べている。
Intel ‘Slaughters Sacred Cow,’ May Move Production to TSMC, Samsung
Tobias Mann is an editor at SDxCentral covering the SD-WAN, SASE, and semiconductor industries. He can be reached at tmann@sdxcentral.com
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