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文:Matt Kapko

マイクロソフト、Amazonと米AT&Tから通信系人材を引き抜き

マイクロソフト、Amazonと米AT&Tから通信系人材を引き抜き

パブリッククラウド事業者第2位のマイクロソフトは今夏、Azureクラウドの経営陣に最高クラスの戦力を加えた。マイクロソフトの市場での地位を強化する可能性のある人物だ。複数の報道機関によると、同社が雇い入れたCharlie Bell氏は長年Amazon Web Services(AWS)社の幹部を務めてきた人物だという。Azureでどういった役割や職責を担うのかはまだわかっていない。

マイクロソフトは今回の採用に関する詳細を明らかにしていないが、アナリストらによれば、Bell氏がAWS社からマイクロソフトに移籍したことはマイクロソフトにとって大きな利益になるという。マイクロソフトは今夏すでに米AT&Tとの取引を通じて通信系を中心とした人材プールを獲得しており、今回さらにBell氏を採用したことで、マイクロソフトが市場シェアを拡大し、急成長を続ける通信クラウド分野での機会を拡大する助けとなる重要な専門知識が加わることとなった。

「Azureの第一の競合がAWSだということは変わらないでしょうが、Bell氏が加わればクラウドサービス分野のトップ企業になることができます」。調査会社IDCのシニアリサーチアナリスト、Patrick Filkins氏は述べている。

 

Charlie Bell氏、AWSからAzureへ

米調査会社ZK Researchで主席アナリストを務めるZeus Kerravala氏の説明によると、AWS社では最近、前CEOのAndy Jassy氏がAmazon社全体のCEOに昇格し、後を継ぐ人物として有力なのはBell氏だと(Kerravala氏自身を含め)多くの人が考えていたという。マイクロソフトが氏を雇用できたことは同社にとって文句なしの勝利だとKerravala氏は言う。

Jassy氏はBell氏をAWS社の経営者に昇格させる代わりに、米Tableauの元CEOでAmazon社の元VPであるAdam Selipsky氏を採用、CEOに就任させている。

「マイクロソフトは実績がありながらも、AWSに遠く及ばないNo. 2にとどまってきました。AWSの要素をいくらか取り込むのは確かに良いことです。セキュリティ上の問題を抱えている今は特にそうでしょう」とKerravala氏。「Microsoft Azure Cosmos DB」の脆弱性について触れた。

「この種の採用では、AWSからシェアを奪えるかが唯一の成功の尺度になるだろうと思います」と氏は話している。

Filkins氏は今回の役員人事がすぐさま大きな変化をもたらすとは考えていないが、「経験豊富なリーダーであり、戦略の策定に資するだけでなく、実行する能力があることが証明されている人物が加わることはプラスにしかならないでしょう」と話した。

 

通信業向けクラウドには「非常に興味深い」チャンスあり

マイクロソフトは通信業向けクラウドの分野でさらなる利益を達成する可能性がある。同社は最近、重要なエンジニアリング人材を数名チームに加えており、その中にはAT&T社でネットワーククラウド担当VPを務め、現在はマイクロソフトで「Azure for Operators」チームのパートナーソフトウェアエンジニアリングマネージャーを務めるRyan van Wyk氏らがいる。

「Azureは明らかに通信業向けクラウドを最優先分野の1つにしています。IaaS(Infrastructure as a Service)領域だけでなく、通信事業者のITワークロードやネットワークワークロードの獲得に関わる部分だけでもなく、主に通信業向けのSaaS(Software as a Service)を通信事業者やエンタープライズ顧客に提供することを含めてです」とFilkins氏は説明する。

「Azureの通信業向け戦略は現段階でAWSやGoogleよりも広範なものになっていて、バリューチェーン全体により多くのタッチポイントがあります。Bell氏は現在の戦略を洗練させる援けとなってくれる可能性があります。考えられる例としては、顧客として、あるいはチャネルパートナーとしての通信サービスプロバイダ(CSP)にさらに焦点を絞っていくかも知れませんし、あるいは戦略を拡大してエンタープライズ企業にも適用していくかもしれません」と氏は言う。

また、Filkins氏によると、マイクロソフトは5G時代の迅速な変革を実現することにもますます力を入れているという。「まだ分かりませんが、AT&Tの知的財産を買収したことを活かせば、Azure はCSP各社がネットワークワークロードを実行するクラウドインフラとして、より魅力的な選択肢になれる可能性があります」と氏。

マイクロソフトが最近AT&T社から買収した技術の中には、コアネットワークやエッジのCNF(Cloud-native Network Function)を支えるクラウドネイティブなインフラの自動プロビジョニングに関するものがある、とFilkins氏は説明する。

「5Gによってクラウドネイティブ化が加速するなか、AzureはCSPが変革を起こすための明確で迅速な道筋を作ることができます。これは過去数年の間に多くのCSPがNFVで行ってきたように、自社で取り組んだりパブリッククラウドを利用したりしてまちまちな結果になってきたのとは対照的です」と氏。

通信市場やクラウド市場におけるマイクロソフトの地位が今後どうなるかは、結局のところ同社の実行力と最大のライバルであるAWS社の実行力にかかっている、とKerravala氏は言う。「通信業向け分野のビジネスチャンスは今、非常に興味深いものになっています。広く開かれた競争環境になっているからです」と氏。

「実際のところ、Azureがエンタープライズ分野でシェアを拡大するためには、マイクロソフトが完璧な仕事をし、AWSが失敗する必要があります。ですが、通信向け分野はまだ初期の段階にあるため、事情が異なります」とKerravala氏は付け加えた。

マイクロソフトは「AT&Tをケーススタディとして、5Gでのビジネスチャンスを追求するための豊富な通信系人材」を手に入れた、と氏は話している

https://www.sdxcentral.com/articles/news/microsoft-lifts-amazon-att-telco-talent/2021/09/

Matt Kapko
Matt Kapko Senior Editor

Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

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