ノキアではモバイルネットワーク事業の売上減少が続いている。2020年にベライゾンとの大口取引を失った影響が今も尾を引いているのかもしれない。CEOのPekka Lundmark氏は2020年後半に3ヵ年再編計画を開始したが、5Gの黎明期に始まった下降傾向をまだ覆すには至っていない。

2021年前半には黒字転換し、大幅な人員削減もあって同年は黒字決算となった。とはいえ、5G RANチップに関する初期の失策やベライゾンがサムスン電子へ取引先を変更したことによる複合的な影響の結果、2021年第4四半期のモバイルネットワーク事業は前年比13%の売上減となった。

同部門にはRAN製品、マイクロ波無線リンク製品、ネットワークの計画・展開・サポートサービスなどが含まれる。四半期売上高は31億5000万ドル（約3,620億円）でノキアの事業全体の43％を占めた。

モバイルネットワーク事業、2021年は7%の売上減

ベライゾンの5G RAN構築でノキアが担っていたポジションを獲得したサムスン電子は、最近ベライゾンと66億4,000万ドル（約7,620億円）で2025年までの契約を結んでいる。ノキアの同部門では2020年から2021年にかけての売上高を前年比7%減としながらも（Lundmark氏は「ほぼ予想通り」とした）、売上総利益率と営業利益率は上昇したと氏は指摘する。

決算電話会見の記録によると、ノキアが持っているネットワーク事業者との4G LTE契約から5G契約への移行率は、全体として「現在約90%の水準で安定している」とLundmark氏は述べている。「もちろん今後に向けたあるべき目標はただ1つ、市場シェアの拡大に転じることであり、それを実現するあらゆるチャンスが当社にはあると考えています」

Lundmark氏の見通しは楽観的だが、他の分野、特にエンタープライズ分野でも困難が続いている。ネットワークインフラベンダーやソフトウェアプロバイダー、通信事業者の界隈ではほとんどあらゆる企業が重要な成長エンジンとして熱い視線を注ぐ分野だ。

エンタープライズ部門は野心を燃やすも期待に及ばず

ノキアのエンタープライズ事業は決算報告で独立部門としては扱われていないが、社内では個別に数字の追跡がされている。「期待には及びませんでした」とLundmark氏は語った。「当社は従来から持っているサービスプロバイダー様の顧客基盤にとどまることなく成長していくという非常に強い望みを持っています。エンタープライズ事業は今後大きな成長機会になると確信しています」

とはいえ、2021年のエンタープライズ事業の純売上高の伸びは1％だった。

「悪いニュースがそれです」。Lundmark氏は言う。「良いニュースもあります。受注が非常に堅調で、特に下半期が良かった」

エンタープライズセグメントの中でもノキアや競合他社にとって重要な注力分野であるプライベート無線ネットワークでは顧客数が急増し、2020年末の260社から2021年末には420社となった。売上高も前年比61.5％の増加となっている。

ネットワークインフラ事業はモバイルネットワーク事業との差を縮める

ネットワークインフラ部門は今回も一目瞭然で最も明るい材料となった。第4四半期の売上高は前年比14%増の25億7,000万ドル（約2,950億円）となり、全事業の35％を占めている。

主要な事業部門間の格差も2021年を通じて縮小しており、12カ月間の総売上に占めるネットワークインフラ部門の割合は30％から35％に急上昇、モバイルネットワーク部門は48.5％から43％に減少している。収益貢献度では1年で10.5%の変化だ。

クラウド・ネットワークサービス部門は前年比横ばいの四半期売上高11億ドル（約1,260億円）となっている。ノキアは同四半期、約73億2,000万ドル（約8,400億円）の売上に対して約7億7,700万ドル（約890億円）の純利益を計上した。

2020年から2021年にかけてモバイルネットワーク事業で8億8600万ドルの売上減少があったが、これはノキアが第4四半期に生み出した利益をすべて相殺し、なお余る金額となっている。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/nokia-confronts-lasting-drag-on-ran-business/2022/02/