楽天、オープンRAN技術で波に乗る
楽天シンフォニーがオープンRANの重要目標を1つ達成しそうだ。一方で、ブラウンフィールド ネットワークを支えられるまでにオープンRAN技術を強化するという面ではまだ成すべき仕事が残っている。
楽天グループ副社長執行役員のTareq Amin(タレック・アミン)氏が先日の第1四半期決算説明会で説明したところによると、楽天シンフォニーのオープンRANシステムは展開済みの既存ネットワークシステムと同等に近いソフトウェア機能を備えているという。既存ネットワークのオープンRANアーキテクチャへの移行を進めたいと考えている通信事業者各社にとって、これは大事な点だ。
「ブラウンフィールド事業者が保有しているあらゆる従来型ソフトウェアと同等の機能を提供できるようになれば、当社は非常に大きな変曲点を迎えることになります。実にエキサイティングなことではありませんか。当社が昨年ずっと力を注いできたのがこのことで、目的はブラウンフィールド ネットワークの本番環境への導入を可能にすることでした」
また、OSS(運用支援システム)についても多くの面で前進したと強調。顧客企業11社に導入、プラットフォーム ユーザー数は10万人を超え、17を超える製品が利用されているとした。導入が進んだ結果、第1四半期の売上高は前年比15%増に迫る7,600万ドル(約110億円)となっている。
楽天は2021年末に楽天シンフォニー事業の分社化を決めた。目的は世界中にオープンRANを普及させていくことだ。
当初は「Rakuten Communications Platform」(RCP)と様々なオープンRAN技術資産/サービスを扱っていたが、後に米Robin.ioを買収、ブランド名を「Symworld」に変更している。
Amin氏によると、第1四半期の販売パイプラインは売上高にして30億ドル(約4,150億円)を上回ったという。前四半期の40億ドル(約5,540億円)からは減少した。
楽天、オープンRANの課題に言及
プラットフォーム自体は前進しているものの、Amin氏は2つの問題がオープンRANの導入を妨げているとも語った。
1つ目は、従来型の通信事業者が使用している様々な周波数帯に対応するハードウェアが不足していることだ。これはキャリア各社共通の問題で、数十年にわたって事業を続けてきた結果、サービスの提供に使用する周波数帯も様々なものが蓄積された状態になっている。
「モバイル事業者のほとんどは自社の基地局に配備する電子機器を集約したいと考えることでしょう。ということは、単体のRRH(リモート ラジオヘッド)だけでなく、デュアルバンド、トライバンド、高出力といった要素を備えた様々な周波数帯に対応可能な製品を望まれるかもしれません」。Amin氏は言う。「そのようなエコシステムを見つけるのは簡単ではありませんでした。些末なことと思うかもしれませんが、そうでもないのです」
2つ目は、上記の問題のソフトウェア部分だ。オープンRANの導入で使用するのであれば、キャリア アグリゲーション(CA)に対応していなくてはならない。異なる周波数帯を組み合わせて単一の伝送路として機能させ、高速化と容量拡大を可能にする技術だ。
「2CAといわず、ダウンリンクとアップリンクの両方で3CA、4CAに対応するのには…(中略)…かなりのエネルギーが必要でした。ですが、ほぼ完成に近づいています。(CA)機能への対応は完了しました」
米通信大手のAT&TとTモバイルUSは最近、いずれも5Gネットワーク展開と関連のあるキャリアアグリゲーションのマイルストーンを達成したと発表している。両社の取り組みは、ノキア、クアルコム、メディアテックなど、定評のある古参のネットワーク関連企業と共同で行われた。
課題についてはさておき、通信事業者各社は自社の既存事業のそこかしこで徐々にオープンRANアーキテクチャの展開を始めている。
今月、英ボーダフォンが5Gネットワークを支える同社初のオープンRAN基地局を稼働させたと発表。トーキー(Torquay)、エクスマウス(Exmouth)の町で現在14基が稼働しており、約8万7,000人をカバーしているという。
ボーダフォンは長年にわたってオープンRANを支持しており、他の通信事業者やベンダーと各種の協力関係を結んでエコシステムを強化している。
英調査会社アナリシス・メイソンによる最近の調査報告では、楽天のAmin氏がMWCバルセロナ2023の席上、ブラウンフィールド事業者によるオープンRANの導入が限定的なものにとどまっていることについて「本当に、本当にがっかりしています」と話したとある。
「ドイツテレコム、NTTドコモ、ボーダフォンを筆頭に、いくつかの小さなエリアでオープンRANの導入に着手している通信事業者もあります。とはいえ、アナリシス・メイソンが2022年第4四半期に実施した通信事業者75社を対象とした調査では、80%以上が2026年以降になるまで都市部の大規模ネットワークにマルチベンダーのオープンRANを導入する予定はないと回答しています」。アナリシス・メイソンのリサーチディレクター、Caroline Gabriel(キャロライン・ゲイブリエル)氏が同報告で述べている。
「この間、通信事業者各社はオープンRANによって実現できると考えているサプライチェーンの創造的破壊、コスト削減が達成できないことになります。チャレンジャーに位置するベンダー各社も大きな収益を上げることはできないでしょう」
Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.
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