トランプ大統領、チップ製造における米国のアジア依存解消を模索
トランプ政権は、現在進行中のCOVID-19パンデミックによるサプライチェーンの不足を受けて、半導体製造における米国のアジアへの依存を解消することに目を向けているが、そのようなアクションを取れば市場における米国のリーダーシップを損なう可能性があるとの声もある。
この関係で、Wall Street Journal紙は、ホワイトハウス当局者がIntel社およびTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)社と、米国内に半導体製造工場を建設するための協議を開始したと報じている。この報道によれば、こうした取り組みは、主に台湾への米国の依存に対する政権の懸念から行われているという。台湾の自治は、主権を主張する中国との数十年に及ぶ領土紛争にさらされている。
Intel社はSDxCentralに提供したコメントで、半導体の国内製造と関連技術を強化する道を模索するため、米国政府と協力していることを認めた。
「Intel社は米国最大の半導体メーカーとして政府と協力し、米国国有の商業用半導体製造工場を運営し、広範かつ安全なマイクロエレクトロニクスを供給することができる立場にあります」とコメントにはある。
Intel社の政策・技術担当VPのGreg Slater氏はWall Street Journal紙に対し、「良い機会だと考えている」と語った。「これまで以上にタイミングが良く、需要もあります。商業サイドからも需要がある」
一方、同紙が報じたコメントによれば、TSMC社は米国工場建設に前向きな姿勢を示したが、現時点では具体的な計画はないと話したという。
影響力を求めて
とはいえ、Boston Consulting Groupの最近のレポートによると、トランプ政権の動機は米国のサプライチェーンを確保することよりも、中国による米国の知的財産へのアクセスを拒否することにあるようだ。同レポートでは、トランプ政権が米国の技術へのアクセスを制限する一方的なアクションを起こした場合、世界の半導体市場にどのような影響を及ぼす可能性があるかを調査している。
「米国は長い間、世界の半導体市場をリードし、そのシェアは45%から50%だ」とレポートにはある。しかし、こうした技術へのアクセスを制限しようとする試みは、市場の優位性を脅かし、米国の利益を損なう可能性がある、とBoston Consulting Groupは主張している。
同グループはまた、現在の貿易戦争がこのまま続けば、米国のチップメーカーに壊滅的な影響を与える可能性があると主張している。
「今後3年から5年のあいだ、米国が現行の企業リストで制定した制限を維持したとすると、米国企業は世界シェアの8%、収益の16%を失う可能性がある」とレポートには書かれている。
また、仮に米国が半導体企業による中国顧客への販売を完全に禁止した場合――事実上「中国との技術分断」を引き起こすことになるが――、米国企業の収益は37%も減少する、と同レポートでは警告している。
Boston Consulting Groupはさらに、「米国以外の定評あるサプライヤーがすでに中国の半導体需要の70%以上に対して供給しており」、中国は2025年までに半導体自給を達成すると予想されているため、このような措置が望ましい効果をもたらすとは考えられないとしている。
レポートの意味するところ
レポートの調査結果は、5月第2週、RCR Wireless News誌が司会を務めたHuawei主催のパネルディスカッションで、Moor Insights and Strategy社、Worthman and Associates社、Omdia Research社の専門家によって検討された。
Boston Consulting Groupのレポートで概説された結果について、Moor Insights and Strategy社のネットワークインフラストラクチャ・キャリアサービスのシニアアナリストであるWill Townsend氏は、「もしTSMC社のような企業にライセンスを与えるための法律が進めば、間違いなく収益プールに悪影響を与えるでしょう」と話した。
Townsend氏は、米国企業が苦境に立たされる一方で、中国が無傷で乗り切ることはないだろうと述べ、中国が半導体インフラストラクチャを構築する2025年までには長い時間があると付け加えている。
一方、半導体の自給までには5年かかると予測されているものの、中国はメモリの分野では自給まで3年未満というところにあり、米国と並んですでにメモリ業界の重要な需要源となっている、とOmdia社のメモリ担当シニアディレクターであるMichael Yang氏は述べている。
しかしながら、Worthman and Associates社の主任アナリストであるErnest Worthman氏は、トランプ政権の動機を完全に感情的なものと見ている。
「この政権が取っている立場は、本当に個人的なものに過ぎない。彼らは今、中国とビジネスをしたくないだけだ」と述べ、パンデミックはすでに傷ついている半導体業界に恩恵を与えることはないと付け加えている。
Boston Consulting Groupのレポートによると、中国との貿易戦争が始まって以来、「米国半導体企業上位25社の前年比増収率の中央値は、2018年7月の第1弾関税発動直前の4四半期の10%から、2018年後半には約1%に急落している」という。
Worthman氏は、このままの状況が続けば、米国は半導体業界で主導的地位を失う「可能性が高い」と述べている。「半導体業界で二桁の損失というのは、ひどいことになります」
とはいえ、Worthman氏は、数字は常に変化していること、不確実性が多々あることについても言及している。とりわけ、11月の選挙でアメリカと中国の関係がどう変わるのかは不確かだ。
「政権が変われば、来年からは全く違う景色が広がるでしょう」とWorthman氏は言う。
Tobias Mann is an editor at SDxCentral covering the SD-WAN, SASE, and semiconductor industries. He can be reached at tmann@sdxcentral.com
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