ウクライナ、AWSの技術でロシアの侵略に対抗
【ラスベガス】先月末から今月頭にかけて開催された「AWS re:Invent 2022」では、ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相兼デジタル化担当大臣がこれまでの経緯について貴重な情報を共有した。現在も続くロシアによる侵略から同国のデジタル資産を保護、継続性を確保するうえで、クラウド大手のAmazon Web Services(AWS)がどのようにして重要な役割を担うことになったかについて自ら語っている。
「今起きているのは、技術的には人類史上最も進んだ戦争です」。フェドロフ氏は記者会見で述べている。「われわれは技術がいかに人を殺しうるかを毎日目の当たりにしています。それと同時に、いかに人を助けうるかということも」
氏によると、ロシアがウクライナへの侵略を開始した2月下旬、AWSが速やかに援助を申し出たという。デジタル情報の保護・バックアップに必須となるインフラおよびプラットフォームを提供した。国の各種データベースや記録類も対象となっている。
「経済や各種の技術システム、銀行、政府などの運営すべての中核になるものです」と氏は補足している。
AWSの政府デジタル化担当役員、リアム・マクスウェル(Liam Maxwell)氏によると、ウクライナ政府は侵略が始まる2月24日のわずか数日前、政府や民間のデータをAWSのクラウドに保存することを許可するという大胆な決定を下していたという。侵略当日にAWSはウクライナ政府関係者と同計画について会談、AWSへのデータ移行、格納、保護を支援するために高耐久のコンピュート/ストレージデバイス「AWS Snowball」3台を同国内に運び込むことを速やかに決定した。
「ウクライナのデータを保全するうえで、これらのデバイスが最初の役割を担いました」とマクスウェル氏。
AWSは2015年に「Snow」製品群を発表した。基本的にはクラウドサービスを物理デバイスに落とし込んだものだ。最初の製品であるSnowballは重さ50ポンド(約22.7 kg)の堅牢なボックス型デバイスで、数テラバイトのデータを格納することができた。その後、ラインナップには大型の製品や小型の製品が追加されている。
フェデロフ氏は現在ウクライナが依存しているデバイスの数については、通訳を介して「正確な数量は公表しない方がよいでしょう」と述べ、言及を避けたものの、48時間のうちにAWSからデバイス供給があったと補足している。
ロシアは重要インフラや電力網を攻撃しており、ウクライナがこれに対処するうえでこうしたデバイスは非常に重要なものとなっている。フェデロフ氏の説明によると、ロシアははじめウクライナのデジタルインフラを爆撃やサイバー攻撃で破壊しようとしたが、これに失敗してからは電力網への攻撃に出ているという。
「彼らが今やっていることは(ウクライナ国民に対する)テロ行為でしかありません」「われわれのエネルギーインフラを破壊しています」。また、最も影響があったのは携帯電話基地局への電力供給を維持する部分だが、政府は衛星通信デバイスをうまく利用することができているとも補足した。
AWSがウクライナ政府と協力していることを受けて、AWSに対してロシアを拠点とするサイバー攻撃が増加しているのではないかという直接的な質問に対し、マクスウェル氏は慎重な姿勢を見せた。「当社は自らを防衛することができています」とだけ述べている。
ウクライナ、技術革新を模索
ウクライナはデジタルエコシステムへの攻撃を非常によく耐えることができているため、政府が提供するモバイルアプリプラットフォーム「Diia」では間もなく複数の新サービスを開始する計画であるとフェデロフ氏はアピールした。デジタルでの住宅ローンサービスや各種の金融アプリなどがあるという。
また、氏は同イベントでAWSが発表した新プラットフォームのうち、「AWS Supply Chain」などに関心を示した。同プラットフォームは組織のサプライチェーンを幅広く管理することを目的としてデータレイクと機械学習を統合提供するものだ。
さらに迅速なことに、両氏はAWSとウクライナの協業をさらに強化し、数千人のウクライナ人を対象とした研修プログラムを立ち上げる契約にステージ上で署名した。「人々はAWS製品の扱い方を身に着けることで新しい仕事を見つけ、IT市場に参入することができるでしょう」。フェデロフ氏が説明している。
写真:(左)ウクライナ副首相兼デジタル化担当大臣ミハイロ・フェドロフ氏、(右)AWS政府デジタル化担当役員リアム・マクスウェル氏
Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.
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