AWS、Microsoft、Googleがエッジも侵食するのか
データセンターやクラウド、通信の分野で、エッジというのはまだぼんやりとした概念のままだと言えるかもしれない。その一方で、議論の余地のないこともあり、それはエッジ市場がこの3分野を横断しながら爆発的に成長する見込みだということだ。エンドユーザーに近接した位置で処理を行えるようにする必要性は高まっている。
米不動産コンサルティング会社JLLの予測によると、今後2年間でエッジ市場の売上高は3,170億ドルに達するという。この数字は、エッジ向けのITインフラ、コロケーション、クラウドサービスのTAM(獲得可能な最大市場規模)を含めたもので、コロケーション事業者のリソース等も踏まえて算出されている。
2020年と比較すると107%増という急成長で、IoTと生成AIがドライバーになるという。この成長を実現するには、「高速なデータ転送と高い計算能力のほか、政策や規制などの要素も」必要になるとした。エッジインフラについて見てみると、企業はエッジデータセンターを頼りに、エッジでリアルタイムのデータ処理と分析を行っている。迅速な意思決定と効率的な運用を進める目的だ。
エッジに特化した市場の急成長と並行して、IoTや生成AIの導入も拡大するとしている。IoT機器市場が向こう5年間は10%近いCAGR(年平均成長率)で成長を続けると予測した。
JLLの米国内データセンター市場担当マネージングディレクター、Andy Cvengros(アンディ・スヴィングロウス)氏がSDxCentralの取材に応えた。氏はまず、エッジ分野とは何かについて、JLLの認識を説明している。データセンターノードを特定の意図した位置に配置して、データ処理やエッジトラフィックの需要に応えるものだ。こうした需要はいままで大都市圏にあるコロケーション施設が満たしていた。
取り組みはまだ初期段階にあり、その多くはAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といったハイパースケーラーが進めている。特定の位置、特定の地域にあるコロケーション施設を利用してエッジを展開している。
「誰もが多くのテクノロジーを利用するようになり、こうした流れは拡大するばかりです」と氏。「さらに多くのテクノロジーを、さらに高いパフォーマンスで提供するとなると、ユーザーの近くに配置する必要があります。このため、国内のあらゆる主要都市で、有機的な発展がみられるようになるでしょう。エッジ関連のものが増え、議論の対象になると思います――鉄塔基地局とか、そういったものについてです。人々は5Gを利用し、携帯電話から多くの負荷をかけるようになるはずです」
Cvengros氏によると、ベンダー各社は何年も前からこうした商機を追求しているという。エッジコネックスなどは、地方にデータセンターを増設、大手ハイパースケーラーにエッジ拠点としてリースしている。また、エクイニクスやコアサイトが「接続ベースの」展開を進め、コアサイトは通信鉄塔リース大手のアメリカン・タワーに買収されていると説明した。
「結局、拠点の展開を進めているのはこういった事業者です」と氏。「施設には外部と接続する光ファイバー設備を多く備え、Cloud on Rampを提供し、ただ容量を提供するのとは異なり、エコシステム型のアプローチを取っています」
米フォレスターリサーチが最近発表したレポートでも、こうした動向に触れている。IoTやエッジに関する商機をめぐってCDN事業者の競争が激化しており、既存のCDN事業者が新しい用途やLLMへの対応を進めているという。
「IoTやエッジのために、大きなオーバーホールが行われています。クラウド事業者は自社のイメージを新しくして、分散クラウド事業者になろうとしています。一方で、従来型のCDN事業者は提供サービスを拡大し、インテリジェントエッジ環境に対応しようとしています。CDN事業者にとってさらに魅力的なのが、ローカルLLMのユースケースで、生成AIとエッジを組み合わせて使用するものです。特に遠隔地での用途に最適で、たとえば石油プラットフォームでリアルタイムの分析が必要とされるケースなどがあります。(中略)大手クラウド事業者も自社で巨大なCDNを持っていますが、Edge-to-Cloudに関しては通常とは異なり、収益性の高い企業向けエッジ事業を追求するうえで、エッジプロバイダーがハイパースケーラーに匹敵する立場にあるのです」
エッジ市場の商機
堅調な成長が予測される一方で、JLLのCvengros氏は次のようにも述べている。進展はまだ最初の段階にあり、これまでのところ特定の地域でみられるにとどまっている。米国内のエッジ市場はまだ始まったばかりだと説明した。
「私自身、起業を考えているグループから連絡を受けることが少なくありません」と氏。「JLLは都心部で多数のオフィスビルを管理しているのですが、地下や屋上などにエッジノードを設置したいようです。ですが、結局、実際に何かを行うことになったりはしていません」
実際に展開が行われているのは、まだ大半がコロケーション施設だという。通信ハブや、都心部にある都市型データセンターだ。「主にハイパースケーラーが、きわめて具体的な目的でスペースを確保しています」
現在みられるエッジ展開を今後さらに加速させていくのも、こうしたハイパースケーラーになる公算が大きい。
米テクノロジー・ビジネス・リサーチが最近発表したレポートでは、ハイパースケーラーの今後について、AIにますます力を入れるなど、「分散コンピューティングのユースケースで利益を上げることに勤しむ」と予測している。Cvengros氏の見解も同じだ。
「いろいろなものが大手グループのもとに集約されていくでしょう。こうしたことを進めるだけの資金力があるからです」と氏。「データセンターのスペースを調達するのも、必ずしもユーザー自身で行う必要のないことなので、大手グループのサービスで提供されることになるのではないでしょうか。Oracleのサービスかもしれないし、Microsoftかもしれないし、あるいはAWSかもしれません。(中略)特定の市場ではAWSのクラウドエッジサービスを利用するとか、Cloud on Rampなどについてもそうですが、自社で行うよりもそういう風になりそうだと考えています」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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