5G事業者各社、マルチクラウドの複雑さに慎重に取り組む
モバイル通信事業者各社は、マルチクラウドは競争上必須の要件であり、ベンダーロックインを避けるための戦略とみなしている。
通信事業者のマルチクラウド採用を後押しする要因は他にもある。顧客がクラウドを好むこと、モバイルエッジコンピューティングが可能であること、それぞれのクラウドが提供する特定の機能があることなどだ。
マルチクラウドからは無数の貴重な成果が得られるが、無線キャリア各社がこれらの強みをクロスクラウドでうまく融合させられるのか、それとも事実上タコツボ型での運用を行うことになるのかはまだ分からない。まったく同じではないが、RAN分野と似ている点もいくつかある。同分野では、通信事業者各社は複数のベンダーの機器を利用しているものの、複雑さを軽減するためにサービスを提供する先の市場1つに対して1社の機器のみを設置するということをしている。
米調査会社ZK Researchの主席アナリスト、Zeus Kerravala氏によると、マルチクラウドは今日の通信事業者にとって諸刃の剣になっているという。「顧客はたしかにマルチクラウドを望んでいるものの、これを実現するには多くの技術的な複雑さとオーバーヘッドが伴います」
「マルチクラウドというシナリオに沿って通信事業者の環境が持つニーズや要求を満たすように運用上のスケーリングを行えば、サービスを展開する速度やTOM(Time to market:市場投入までに要する時間)に影響します」とKerravala氏は言う。
通信事業者はマルチクラウドのコストとメリットを比較検討する必要がある
そのため、通信事業者はクラウドベースのワークロードやサービスを展開する際に、コストと技術的メリット、サプライヤー固有のメリットを比較検討する必要があると氏は説明する。
英調査会社CCS Insightのエンタープライズリサーチ部門のチーフ、Nick McQuire氏が最近の電話インタビューで説明したところによると、マルチクラウドモデルとは「複数の顧客向けクラウドサービスを増やしていくことができるようなサービスアーキテクチャを実現するためのものであり、また一方で内部的には内部ネットワークやIPスタックをどうクラウドに移行していくかという文脈のもの」だという。
McQuire氏によると、通信事業者は複数のクラウド事業者と提携することでクラウドへの投資を事実上分散させており、プロジェクトごと、ワークロードごとにクラウド事業者を吟味するという入念なアプローチを取っているという。
しかし、願望と現実が完全に一致しているわけではない。「通信事業者のほとんどは、複雑さとオーバーヘッドを回避するため、最初は1社のクラウド事業者から始めて、おそらくAmazon Web Services(AWS)ではないかと思いますが、それからマルチクラウドへの移行を検討するでしょう」とKerravala氏は言う。
通信事業者-クラウド事業者間の独占契約を勧める人はまれ
調査会社IDCのシニアアナリスト、Patrick Filkins氏は、それでも「通信サービス事業者は、まだ単一のクラウド事業者に肩入れしないことが重要です」と話す。また、プライベートネットワークやエッジクラウドのインフラの分野ではどのハイパースケーラも勢いを増していると付け加えた。
「最終的には、どのクラウド事業者でどのワークロードを実行するかについては、企業の側に言いたいことがたくさんあるでしょう。通信サービス事業者が1社のクラウド事業者としか提携していなければ、市場でのポテンシャルが制限されるかもしれません」
1社のクラウド事業者を全面的に利用している事業者は比較的少ないが、米Dish Networkのような特殊な例もある。同社では、ネットワークワークロード、RANコンピュート、様々な形態のエッジコンピューティングなど、可能な限りのものをAWSクラウドに置こうとしている。
ベライゾンでは以前はパブリックエッジクラウドにAWS、プライベートエッジクラウドにMicrosoft Azureを利用する予定だったが、最近では両方でAWSを利用する選択に傾いていることが伺える。また、AWSは現在Verizonが商用利用できる唯一の選択肢でもある。
「内部のワークロードを単一のクラウド事業者によって実行することは問題ないかもしれませんし、実際にそれが最適な選択になるかもしれません。とはいえ、通信サービス事業者にはマルチクラウド対応が必要になるでしょう。顧客が自社のアプリケーションを特定のクラウドやエッジクラウドプラットフォームで実行させたいと考えている場合にはなおさらです」とFilkins氏は言う。
米調査会社Appledore Researchの創設者兼主席アナリスト、Patrick Kelly氏も通信事業者-クラウド事業者間の独占的な提携に関しては懐疑的だ。「独占的なクラウド契約を結ぶことには意味がありません。各ハイパースケーラはいずれも事業上の成果に基づいた強力な価値提案をしているからです」
https://www.sdxcentral.com/articles/news/5g-operators-slog-through-multi-cloud-complexities/2021/05/
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
JOIN NEWSME ニュースレター購読
KCMEの革新的な技術情報を随時発信
5G・IoT・クラウド・セキュリティ・AIなどの注目領域のコンテンツをお届けします。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
RELATED ARTICLE 関連記事
-
IT Dan Meyer2024.10.30
米通信大手はエンタープライズ市場の競争に挑むのか=各社の取り組み
通信事業者から見たエンタープライズ分野のTAM(獲得…
-
IT Dan Meyer2024.09.17
Broadcomは「脅迫者」=米AT&Tが酷評
米Broadcomによる買収を受けて、VMwareの…
-
5G Dan Meyer2024.09.09
5G時代へ=中小の通信事業者は備えができているのか
最新の5G機器や、vRAN/オープンRANのようなア…
-
5G Dan Meyer2024.07.30
企業のIT部門とOT部門は、プライベート5Gについて語る時期がきたのではないか?
プライベート5G市場は、採用というよりもチャンスに後…
HOT TAG 注目タグ
RANKING 閲覧ランキング
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2024年における10のネットワーキング技術予測
-
IT Dan Meyer
BroadcomによるVMware製品の価格/ライセンスの変更がどうなったか
-
セキュリティ Nancy Liu
SASE市場が急成長=第1四半期、首位はZscaler
-
IT Dan Meyer
BroadcomがVMwareパートナープログラムの詳細を発表
-
スイッチング技術 Tobias Mann
コパッケージドオプティクスの実用化は何年も先=専門家談
-
セキュリティ Dan Meyer
SIEM市場が激変=CrowdStrikeはAI支援で備え
-
ネットワーク Dan Meyer
AT&T、ノキアのオープンRANへの関心は薄いが、光ファイバーは重視
-
OPEN-RAN Dan Meyer
オープンRANに必要な後押しはAIなのか
-
IT Dan Meyer
米キーサイトがVIAVIのスパイレント買収に「待った」=15億ドルを提示
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2023年 ITネットワークのトレンドTOP10 現時点