クラウドネイティブのエコシステムにはKubernetesに焦点を当てたオープンソースプロジェクトが数多く存在しており、「選択のパラドックス」が起きている。

オープンソースコミュニティの広さからKubernetesがいかに健全で影響力のあるものであるかが伺えるが、エコシステムで最大の課題の1つもそこから生まれているという。米Red Hatのクラウドプラットフォーム市場インサイト責任者、Stu Miniman氏がSDxCentralの取材で語った。

「単独で完全なソリューションを提供しているベンダーは1社もありません。つまりは、企業各社はどういった空白を埋める必要があるかを踏まえ、それを埋める周波数帯や専門性を備えているかを確認する必要があります」。Miniman氏は言う。提携や顧問契約のメリットが活きる部分だ。「とりわけ、事実上オープンソースがイノベーションのエンジンとなっているクラウドネイティブやコンテナを中心とした分野ではなおさらです」

Miniman氏によると、オープンソースプロジェクトの利用を検討している企業は以下のことを自問すべきだという。

• そのプロジェクトでは何をしているのか、それは自社が解決しようとしている問題とどのように整合するか
• そのプロジェクトはどのような仮想ユーザーを対象としているか
• プロジェクトに寄与している企業・団体はどこか
• 競合プロジェクトは存在するか
• そのプロジェクトと関係のある他のプロジェクトはあるか。もしあれば、そうしたプロジェクトを自社で利用しているか
• コミュニティメンバーの関わり方（エンゲージメント）はどのようなレベルと質か

コミュニティのエンゲージメント分析は「管理していて興味深い部分です」と氏は言う。ある企業がオープンソースプロジェクトに参加し、自社で活用もしている場合、より熟練していてプロジェクトの微妙な特徴を理解して反映できることだろう。

GitHubのスター数やプロジェクト参加企業もプロジェクトの全体としての健全性を示す良い指標となるが、自社のスタック全体の重要部分を埋めるピースを探している企業がもう1つ考慮すべき領域として、プロジェクトが長期的に継続されるどうかというものがある。「ロードマップを推進しているのは誰か、プロジェクトのガバナンスはどのようなものかという部分です」。Miniman氏は言う。

氏が提案している最もシンプルな戦略の1つは、他の人と話をしてどのようなプロジェクトを利用しているか、適切なプロジェクトを見つけるまでに何を試したかを教わることだ。

「具体的なニーズを満たすプロジェクトを探す時には、RedditのようなSNSから業界アナリストの調査レポートまであらゆるものが利用可能ですし、利用すべきです」と氏。

また、Kubernetesにモジュール性があることも、ユーザー企業のニーズを十分に満たせる有効な選択肢が複数存在する原因になっている。例えばサービス管理アーキテクチャを構築する場合、一見重複しているように見える類似のプロジェクトをいくつか選択することが有益な場合がある、と氏は説明する。

カルチャーの変化

15年前のIT企業は業界全体の課題の解決に各社が個別に取り組んでいた。しかし現在では、同業者と協力し、互いに学び、業界の傾向や課題をより広いスケールで理解しようとするカルチャーが主流になっているという。

ここにはオープンソースエコシステムの最大の強みの1つ、コミュニティ重視の姿勢と協力的な性質とが表れている。

「今日最も広く利用されているオープンソースプロジェクトのいくつかは、Kubernetesもそうですが、自社の問題を解決しようとしていた企業内部の取り組みという形で始まりました。その後、コミュニティ主導のイノベーションが業界全体にもたらす可能性に気付いたのです」

これによってKubernetesの成熟度は新たな水準に達したという。「1人でやる必要はありません。仲間から学び、Kube by Exampleのようなリソースを頼り、特定の活動について理解し、どこから始めればよいかを知り、その過程では助けを得ることができるのです」。Miniman氏は述べている。

https://www.sdxcentral.com/articles/interview/how-to-choose-the-right-open-source-projects/2022/04/