IBMのCEO、通信業界の未来を形作る「地殻変動の力」について語る
IBMのCEO、Arvind Krishna氏は29日、MWCバルセロナの基調講演で、現在は4つの「地殻変動の力」――5G、エッジ、ハイブリッドクラウド、人工知能(AI)の4つだ――が組み合わさって通信業界の未来を形作っているところであり、通信事業者が成功するためにはオープンテクノロジーが必要になると語った。
「通信事業者がデジタル変革とネットワークの進化を両立させようとすると、新たな問題にぶつかります。ロックインを伴うプロプライエタリなシステムが問題になるのです」と氏は言う。「そのため、IBMではオープンテクノロジーの発展や、オープンRAN標準のような業界標準の開発を強く支持しています。通信事業者が成功し、5Gやエッジが軌道に乗るためには不可欠なことだと考えています」
Krishna氏によると、エッジとは、ベアメタル、仮想環境、プライベートクラウドやパブリッククラウドを融合させたデータセンターの延長線上にあるもので、従来のIPモデルでは対応が難しかった顧客の要求にも対応できるインフラを構築するものだという。「重要なのは、キャリア各社は5Gとエッジのパワーを単なる接続ソリューションとしてではなく、ビジネスサービスのプラットフォームとして活用するという大きな可能性を秘めていると理解することです」
Krishna氏の説明によると、通信事業者各社は当初、主要なネットワーク機能の仮想化に注力したのち、現在はLinux、コンテナ、Kubernetesをネットワーク変革の中核に据えるという新たなアプローチを採用していっているという。
これは、通信事業者がコアネットワーク、RAN(無線アクセスネットワーク)、エッジネットワークをよりよく制御するための「大がかりな取り組み」だと氏は付け加えた。
オープンテクノロジーが通信事業者にもたらす競争優位性
Krishna氏によると、このビジョンを実現するためには、オープンな枠組みと一連の原則を持つことが鍵になるという。通信事業者はオープンテクノロジーによって、コンバージドインフラと分散型インフラの両方で形成する共通基盤において、柔軟性を確保し、「他の方法では混沌としてしまうものを明確にし、一貫性を持たせる」ことができる、と氏は言う。
「オープンテクノロジーとオープン標準は、競争優位性を実現する鍵となります。オープンにすることで、より高速になります。オープンであれば、広大なコミュニティを利用できます。オープンであるということは、アプリケーションやサービスをどんなインフラにも展開できるということです」と氏。
現在、150社以上の通信事業者がIBM Red Hatの技術を利用しており、その中には世界最大規模の通信事業者の80%が含まれている、と氏は言う。
ベライゾン、5GコアネットワークにIBMのRed Hat OpenShiftを採用
IBM CommunicationsのグローバルGM兼マネージングディレクター、Steve Canepa氏が同日のブログ記事で発表したところによると、こうした顧客の1社であるベライゾンは、5Gコアネットワークの基盤として、運用を自動化しサービスのオーケストレーションを備えたオープンなハイブリッドクラウドプラットフォームを構築・展開するに当たり、IBMの協力を得ているという。
Krishna氏は基調講演で、「現在、私たちはIBMの通信業向けネットワーククラウドをベライゾンのサービスオーケストレーションプラットフォームに統合する作業を進めており、ベライゾンがRed Hat OpenShiftを使って運用することでメリットを得られるように支援しています」と述べている。「これにより、ベライゾンの5Gコアネットワークにアジリティ、自動化、伸縮自在性をもたらします。コストの削減、TTM(市場投入までにかかる期間)の短縮、サービスの向上につながるでしょう」
ベライゾンのスタンドアロン(SA)方式の5Gコアネットワークはまだ開発中だ。ベライゾンは以前、2020年までに同コアネットワークで一部のトラフィックを運用し、2021年には完全な形で商用化するとしていたが、その後この取り組みについての続報を発表していない。
IBMは昨年、5Gネットワーク事業者をターゲットに、オープンなハイブリッドクラウド技術を包括したプラットフォーム「IBM Cloud for Telecommunications」を立ち上げた。Krishna氏によれば、現在までに40社を超えるパートナー企業が同プラットフォームに参加しているという。
また、合わせて「IBM Cloud for Network Automation」のリリースを発表した。5Gとエッジサービスのための人工知能(AI)機能のスイートだ。Krishna氏によれば、同ソリューションはRed Hat OpenShift上で動作し、サービスの遅延を数日から数分に短縮できるという。「AIによる自動化を利用して、ネットワークの迅速な立ち上げと管理を行い、新しいサービスを迅速に拡張し、応答時間を最小で1/6に改善して頂けるようになりました」
IBMは「IBM Cloud Pak for Network Automation」の主な機能として、ネットワークライフサイクルのモデリング、インテント駆動型のオーケストレーション、サービス自動化の設計とテスト、ネットワークパフォーマンスのライブビュー、ゼロタッチオペレーションを挙げている。
「通信事業者は岐路に立たされているというのが実際のところです」とKrishna氏は言う。「彼らが考えているのは、クローズドな未来かオープンな未来という2つの未来のどちらかを選択しなければならないということです。オープンな未来とは、デジタル変革への道のりを自分でコントロールでき、ハイブリッドクラウドやAI、オープンテクノロジーなどあらゆるイノベーションの恩恵を受けられる未来です」
https://www.sdxcentral.com/articles/news/ibm-ceo-surveys-tectonic-forces-shaping-telco-future/2021/06/
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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