OPEN-RAN
文:Matt Kapko

楽天はオープンRANの最高の事例か、それとも最悪の事例か

楽天はオープンRANの最高の事例か、それとも最悪の事例か

楽天はこれまでとまったく異なる、ほとんど実績のないアーキテクチャでモバイルネットワークを構築するという大胆な決断をしたことで多くの尊敬と応援を集めているが、同社の挑戦はオープンRANというビジョン全体に対して良い影響よりも悪い影響を与えてはいないだろうか。

楽天は2021年第1四半期、楽天モバイル部門で8億8700万ドル(約970億円)の損失を計上した。損失がさらに拡大したことは、楽天がグリーンフィールドのモバイルネットワークで利益を上げられるにしても、それがすぐにではないかもしれないことを示している。

また、楽天の取り組みは多くの点で類を見ないものではあるが、他の通信事業者がオープンRANトポロジーを全面的に採用した場合に遭遇する可能性のあるネガティブな点を示す資料にもなっている。全国規模のネットワークを構築するのはインフラがどんなものであっても簡単ではなく費用もかかることだが、そうした労力や資金投入を収益を上げられる力強いビジネスに変えていくことも見過ごしてはならない。

楽天は2020年4月に4G LTEを提供するクラウドネイティブなオープンRANを稼働させ、さらに2020年9月には5Gサービスを開始している。

 

パイオニアの成功や失敗は誇張して語られる

楽天は良くも悪くもオープンRANのシンボルのような役目を担っている。オープンRANでは何ができて何ができないのか、何百ものネットワーク事業者やベンダーが先例として楽天に注目しているため、同社の成功や失敗は誇張して語られがちだ。

米調査会社Senza Filiの主席アナリストであるMonica Paolini氏は、「私たちはオープンRANと楽天をイコールで結びたくなる衝動を抑える必要があると思います。楽天は他とは非常に異なるオペレータであり、非常に革新的で、これまでとはまったく異なるアプローチを取っているからです」と話す。「これがオープンRANであるとまとめてしまったり、楽天こそオープンRAN事業者であると見なしたりするのは楽天とオープンRANの双方に対してひどい仕打ちだと思います。とはいっても、楽天が最も注目されているオープンRANの展開であることは明らかです」

氏の説明によると、楽天はオープンRANの一例ではあるが、Eコマース大手をバックに持つグリーンフィールドオペレータであるというユニークな立場にあるため、他の通信事業者が踏襲できるようなモデルを構築しているわけではないという。「楽天がこの業界で失敗するにせよ成功するにせよ、私たちはそこから多くのことを学ぶことになるでしょう」

米調査会社Appledore Researchのパートナー兼主席アナリスト、Grant Lenahan氏によれば、オープンRANの台頭によってモバイルネットワークオペレータ市場は革新的なプレイヤーと伝統的なプレイヤーに分かれていくという。「どちらもオープンRANによってアジリティとコスト優位性を獲得しようとしていますが、楽天のような企業にはグリーンフィールドの利点があり、安定した公共事業に報酬を与えて強化するのとは逆にリスクを取り市場シェアを獲得する企業に報いる金融市場からも恩恵を受けています」と氏は言う。

「楽天は今も、オープンRANの原則に基づいたネットワークを実現している最大かつ最先端の事例です。彼らは協力した主要ベンダーと一緒になって、今回得た知見や経験を広範なオープンRAN活動へ積極的にフィードバックしています」とLenahan氏は説明する。「各通信事業者のオープンRANへの取り組みは、いずれもそれぞれの市場の状況、それぞれの野心によるものです。現段階で楽天の挑戦がオープンRANに否定的な影響を与えていると考えるのは間違いでしょう。そのような判断を下すにはまだ早すぎます」

 

より実態に近いオープンRANの試練を受けるのはレガシーネットワーク事業者

米MTN Consultingのチーフアナリスト兼CEO、Matt Walker氏は、オープンRANのより実際的な見本になるであろう企業としてVodafoneを挙げている。同社のネットワークは典型的なモバイルネットワーク運用をしているためだ。ドイツテレコム、仏Orange、西Telefonicaといった欧州の他のレガシーベンダーもオープンRANを積極的に推進しており、一緒になってこれを「将来のネットワークに選ばれる技術」とみなしている。

楽天モバイルの損失は予想されていたことで、SDxCentralがインタビューしたアナリストらにとっては驚くことではなかったようだ。米調査会社Moor Insights & Strategyのシニアアナリスト、Will Townsend氏は、「オープンRANは最終的にはCAPEXとOPEXに資するという見込みを実現することになると思いますが、今はまだごく初期の段階であり、エコシステムの参加者がプラットフォームを成熟させるには時間が必要です」と話す。

「楽天はオープンRANのシンボル的な先駆者ですが、オープンRANの高度にディスアグリゲーションされた性質を考えると、統合作業の難しさを過小評価していたかもしれません」と氏は説明する。

ネットワークの構築や統合にかかるコストはおそらく計画よりも高くついたかもしれないが、「楽天が期待しているのは、日本で大きな顧客基盤を獲得、あるいはRakuten Communication Platform(RCP)のグローバル展開を成功させることで、そうしたコストを最終的に分散できることです」とWalker氏。RCPはカスタマイズ可能なプラットフォームで、他のネットワーク事業者がオープンRANの計画・展開・管理に利用できるものだ。

さらにWalker氏は、「楽天の他の事業部門との連携が重要になる可能性もあります」と話している。こうした理由などから、楽天は長期的な視野でモバイルビジネスに取り組んでいるという。「この時点で通信事業が失敗すれば、楽天全体のブランドにダメージを与えることになります。リスクはありますが、インターネット分野の企業は巨額の報酬を得るために多くのリスクを受け入れることに通信業界よりも慣れているのです」

業界の評論家やベンダー、通信事業者にとって重要なのは、オープンRANというのは通信事業者がどのような導入計画を立てるかによって決まるものだと認識することだ。考慮事項にはアーキテクチャやトポロジーの選択、資産構成、各通信事業者のトランスポートコストなどが含まれる。こうした要素はすべて、各ネットワークに対してオープンRANが持つコスト削減効果や有効性に影響を与えるとPaolini氏は説明する。

 

オープンRANは、1社の通信事業者やベンダーによって決まるものではない

「オープンRANは、ネットワークに組み込む単一のモノリシックなものではないと理解する必要があります。「御社にはオープンRANがありますか」と聞くようなものではないのです」と氏は言う。

米調査会社Dell’OroグループのVP、Stefan Pongratz氏は、長期的なオープンRANのビジョンについて、「オープンRANを推進する主な原動力の1つは、サプライヤーの多様化に対応すること、将来さらに統合が進んだ場合に機器交換費用が発生する可能性を減らすことです」と話す。

「概ね、このシナリオは変わったと思います。オープンRANはもはや総所有コストの削減ではなく、パフォーマンスに影響を与えずにサプライヤーの多様性を向上させるためのものになっています」と氏。

Lenahan氏によると、楽天が通信業界全体に与える影響はまだ始まったばかりだという。「楽天は、業界に対して真に破壊的なビジョンを持つ、非常に熱心で野心的な企業です。オープンRANプロジェクトには、すでに通信事業者ごとに異なる複数の目標がみられます。インターネット接続のない地域に接続を提供することや、都市部のネットワークの高密度化、プライベートネットワークの提供、ベンダーの多様化などです」と氏。

「楽天はこれらすべてを一度に行っており、また、どの通信事業者でもそうした目標を達成しやすくできるようにするというビジョンを持っています。そこが本当に他とは異なるところです」とLenahan氏は締めくくった。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/is-rakuten-the-best-or-worst-example-of-open-ran/2021/05/

Matt Kapko
Matt Kapko Senior Editor

Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

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