マイクロソフトはデータセンターバッテリーを利用して地域の電力系統と連携し、再生可能エネルギーの供給を需要が上回った時には無停電サービスを提供している。

太陽はいつも出ているわけではなく、風はいつも吹いているわけではない。再生可能エネルギーが普及していくなか、電力網を運営する電力会社は使用者が必要とする正確な量の電力を供給することに苦心している。需要のスパイクに迅速に対応できるよう、主に石炭と天然ガスを電力源とする電力系統で余剰電力（運転予備力）を確保している状況だ。

マイクロソフトは運転予備力を維持するという炭素集約的な慣行に頼るのでなく、データセンターにリチウムイオン電池を設置することで電力セクターの炭素排出量を削減できると考えている。

「自治体や電力会社が化石燃料によるソリューションから脱却しようとしている地域で再生可能エネルギーの供給量が低下しているのなら、企業としてできることは当社による大量の負荷について対処することです。自社で使用できるバッテリーを設置することでこれを減らすことが可能です」。マイクロソフトの主席プログラムマネージャー、マイカ・ガンブレル-エルマック（Mycah Gambrell-Ermak）氏が説明している。

シニアエネルギープログラムマネージャーのヌール・ベルナール（Nur Bernhardt）氏も、同グリッドサービスは「データセンターの新たな価値を開くもの」だと補足している。

グリッドインタラクティブUPS

このソリューションの基盤となるバッテリーには、データセンターのUPS（無停電電源装置）の一部を使用している。UPSの主な用途はデータセンターの緊急バックアップ電源としての利用だが、マイクロソフトのUPSは電力系統に接続し、必要に応じて電力系統にも無停電サービスを提供できるように認証、検証、承認がなされているという。

同社は現在、アイルランドのダブリンにあるデータセンターでこの戦略を展開している。アイルランドでは2030年までに変動性再生可能エネルギーで国内電力消費量の80%を賄う計画を進めており、これには化石燃料発電所による系統安定化サービスが必要になるが、マイクロソフトはこれを回避するための取り組みを続けている。

アイルランドの送電事業者エアグリッド（EirGrid）、エネルギーサービスプロバイダー（ESP）のエネルエックス（Enel X）と協業しており、エネルエックスは産業・商業部門の消費者向けにVPP（仮想発電所）のアグリゲーションを提供している。

「電力会社はアグリゲーション事業者を経由して当社に信号を送り、バッテリーを放電させて当社の負荷を相殺するよう指示を出すことができます。これによって電力網の負荷を軽減できます」。ガンブレル-エルマック氏は説明している。

推定される影響量

エネルギーアドバイザー企業の英バリンガ（Baringa）の推定によると、アイルランドと北アイルランドの化石燃料発電所をグリッドインタラクティブ（系統連系）UPSシステムに置き換えた場合、2025年に約200万トンの炭素排出が回避されるという。これはアイルランドの電力セクターによる予想年間排出量の約5分の1に相当する。

また、燃料調達や運転予備力の維持コストを回避できることで、アイルランドの電力消費者にとっては数千万ドルの節約になるという推定も出している。

「3つ目の利点は、再生可能エネルギーの供給を停止しなければならないことが減ることです」。バリンガのマーク・ターナー（Mark Turner）氏は言う。「これは、サービスを提供するのにガス火力発電所を稼働させるとしたら、代わりに他の何かを停止させなければならないからです。多くの場合、それは再生可能エネルギーだということになります。UPSで提供すれば、その必要はなくなります」

「間違いなく国家レベルの排出量削減につながります」。氏は付け加えた。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/microsoft-grid-interactive-ups-bolsters-renewable-energy/2022/07/