米クアルコムと富士通、5GオープンRAN機器の統合で協力
2月末から開催されたMWCバルセロナ2022で、米クアルコムは富士通と共同で構築した新しい完全統合型オープンRANプラットフォームを発表した。また、オープンRAN機器への製品採用が進んでいることに触れ、RAN分野への変わらぬ熱意を示した。
同プラットフォームでは5Gミリ波分散ユニット(DU)・無線ユニット(RU)を統合、パフォーマンスと電力効率を向上するとともに仮想化オープンRANインフラの運用コストを削減するとしている。
クアルコムとそのパートナー企業各社は、新世代の高性能なミリ波アプリケーションを実現するに当たってこの統合5Gモジュールが重大な役割を果たすとしている。
「今回の共同コラボレーションによって、フルパッケージのミリ波DU・RUソリューションを実現する画期的な技術を発表できるだろうと考えています」。富士通モバイルシステム事業本部長の谷口正樹氏は述べている。
富士通はこの統合DU-RUモジュールの導入サポートを提供する予定だ。また、NTTドコモの5GオープンRANエコシステム(OREC)にも参加している。
クアルコムのオープンRANビジョン、加速度的に前進
クアルコムでは富士通とのコラボレーション以外にも、オープンRAN機器製品もキャリアや通信機器ベンダーからの関心を集め続けている。スペイン・バルセロナで開催された「MWC 2022」に先立ち、ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)、楽天シンフォニー、米マベニアの3社がオープンRAN開発を加速させるためにクアルコムと協業すると発表していた。
3社のコラボには共通する要素がある。クアルコムの5G RAN DUアクセラレータカードだ。
「X100 5G」アクセラレータカードは昨夏のMWC 2021で発表された。PCIeインターフェースを介して市販のサーバと統合し、サブ6GHz帯とミリ波帯のネットワークを同時に支えることができる。
このカードは復調、ビームフォーミング、チャネルコーディング、Massive MIMOなどのレイテンシセンシティブで計算集約型の5Gベースバンド機能をCPUからオフロードすることで動作する。これによってオープンRANネットワークを支えるのに必要なコア数と、ひいては消費電力や設置面積を削減できる。クアルコムのRAN市場再参入における主要製品でもあり、同社は5GオープンRANスモールセル、DUアクセラレータカード、システムオンチップ(SoC)ベースの製品群を提供していく予定だ。
「スモールセルだけでなく、大容量無線ユニット関連のソリューションも用意しています。また、データセンターに直接接続するインラインアクセラレータカードもあります」。クアルコムCEOのCristiano Amon氏が昨年11月の投資家向けイベントで述べている。「セルラーインフラは変化しつつあります。RANが仮想化されつつあることで根本的に変化しようとしているのです」
HPEは「世界初の完全最適化仮想DU」とうたった新製品にクアルコムの5Gアクセラレータを使用し、これによって仮想オープンRAN分野に参入する計画だ。
クアルコムによると、この仮想DUはQualcomm X100 5G RANアクセラレータカードを搭載した薄型のHPE ProLiant DL110 Telcoサーバを使用しており、既存の5Gインフラと比較して電力効率とパフォーマンスが優れているという。これによって1台のラックユニットサーバで高密度のミッドバンド5GやMassive MIMOの展開を支えることができ、所有コストも60%削減できるとしている。
楽天シンフォニーとマベニアは2月下旬、クアルコムのX100 5G RANアクセラレータおよび無線ユニットプラットフォームを合わせて導入し、「64送信64受信(64T64R)」構成のMassive MIMOアンテナ展開を目指す計画をそれぞれ発表した。クアルコムによると、これらの製品によってデータ通信速度とカバレッジは大幅に向上、ネットワーク全体の容量も増加するという。
2020年後半にクアルコムが発表した「Qualcomm Radio Unit Platform」(以下、QRUプラットフォーム)には、Massive MIMOアレイなどのセルラーアンテナを利用する低レベルの物理層トランシーバや無線周波数トランシーバを高速化するために開発されたASIC群が含まれている。
まだ始まったばかり
クアルコムのRANビジョンに賛同する企業はこの3社にとどまらない。
2020年後半に5G RANチップセット市場への参入を表明して以来、クアルコムはドイツテレコム、NTTドコモ、ボーダフォン、NECなど複数の大手通信事業者や通信機器プロバイダとの提携を発表している。
クアルコムはセルラーモデムの大手サプライヤであり、ミリ波RANインフラで利用する5Gスモールセル用チップセットには精通している一方、マクロ/マイクロセルラー基地局やサブ6 GHz帯に対応したのはごく最近のことだ。
https://www.sdxcentral.com/articles/news/qualcomm-fujitsu-team-on-5g-open-ran-consolidation/2022/03/
Tobias Mann is an editor at SDxCentral covering the SD-WAN, SASE, and semiconductor industries. He can be reached at tmann@sdxcentral.com
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