OPEN-RAN
文:Matt Kapko

楽天、世界のオープンRAN市場を注視=市場規模は16兆円

楽天、世界のオープンRAN市場を注視=市場規模は16兆円

楽天モバイルの赤字は拡大の一途をたどっている。黒字化は2023年以降になる見込みだ。しかし同時に、同社ははるかに大きな市場で多額の利益を上げることを狙っている。

創業者兼CEOの三木谷浩史氏は、自社のモバイル戦略を「トライアングル戦略」と表現する。2021年第2四半期の決算発表で、氏は「一石三鳥を目指している」と語った。

3つの頂点のうち1つ目は、日本で展開するSA(スタンドアロン)方式モバイルネットワークだ。

(2つ目として)既存顧客のLTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)向上とモバイルサービスを通じた新規顧客の獲得も進めているが、三木谷氏によれば、3つ目の頂点である「Rakuten Communications Platform」(RCP)の拡大に最も大きなビジネスチャンスがあるという。

「5年から10年後には、RCPの売上と利益が他の事業を上回る可能性があります」と氏は言う。また、2025年にはTAM(獲得可能な最大市場規模)が1,500億ドル(約16兆5120億円)に達する可能性があるとした。楽天の2020年の売上高は132億ドル(約1兆4,560億円)となっている。

 

楽天、世界の通信市場でシンフォニーを指揮

8月上旬、楽天はRCPの取り組み強化を目的とした一連の取引を発表した。米Altiostarの買収、ドイツのグリーンフィールド通信事業者、1&1 Drillischと結んだ5GオープンRANの設計・構築に関する合意、新統括会社「Rakuten Symphony」の設立などだ。同統括会社にはRCPやオープンRANに関するさまざまな技術資産とサービスを集約する。

楽天モバイルCTOのTareq Amin氏はSymphony社について、モバイル事業の旅路の第2フェーズだと説明する。「私たちの目標は、世界最大のクラウドネイティブな通信業界向けプラットフォームを提供する事業者になることです」と氏は言う。

「Rakuten Symphonyは、グローバルにインダストリアル型のプラットフォームソリューション提供を行うことでクラウド変革を実現します」とAmin氏は言う。また、楽天モバイルのネットワークは日々改善が行われる「生きたラボ」となっており、社内の技術者たちは「業界の誰よりも速く学んで」いるとした。

現在、楽天モバイルでは月に最大15個の新しいネットワーク機能を導入しているという。「自動化スクリプトを毎日5つ作成しています。2,000人を超えるソフトウェア開発者が当社の経験すべてをコードに落とし込んでおり、クラウド技術や新技術のトレーニングを毎週1,500人に実施しています」

Rakuten Symphony社がターゲットとするのは、統合クラウド、ネットワーク機能、インテリジェントな運用、DX(デジタルエクスペリエンス)、楽天グループが提供する広範なサービスなど、通信業界に特化したビジネスチャンスだ。Amin氏によると、この事業部門では、「独自のアプローチと幅広い統合アプリケーションポートフォリオ」、柔軟な統合、製品の透明な価格設定、自動化などによって、「通信業界の様相を形作っていく」という。

 

楽天、ドイツの1&1 Drillisch社と提携

氏は楽天が公表したRCPの最初の顧客である1&1 Drillisch社との契約について、複数年契約であると説明した。また、楽天では現在、米国で27社、アジア太平洋地域で22社、欧州で19社、中東・アフリカで11社、ロシアで5社の見込み顧客との「交渉が進展した段階にある」という。

三木谷氏は、決算発表の場で放映された事前録画インタビューの中で、オープンRANを実現するという楽天の早い段階での取り組みが今、世界中で支持を拡大していると語った。「現在、クラウドへの移行が話題になっていますが、それは主にコアネットワークでの話です。末端の基地局はまだハードウェアに大きく依存しています」と氏は言う。また、基地局と無線機は今もモバイルネットワーク事業者にとって最大のコストになっているとも補足した。

Altiostar社の買収については、「全体的なコストを抑えるには、自動化を実現する方法、基地局にかかる投資額を削減する方法を見つけることが非常に重要です。現時点でこれを実現できる唯一の企業を買収できたことは、非常に意義深いことです」と述べている。

Rakuten Symphony社が世界の通信事業者の注目を集めることを目指す一方で、日本でのモバイルネットワークに関する氏の目標もまた、同じくらい壮大なものだ。「私たちは日本でNo.1の携帯電話会社になることを目指しています」と氏は述べ、低コストでスピーディな開発がこの野望を支えていると語った。

楽天モバイルの売上高は前年同期比17%増の4億6600万ドルであったものの、営業損失は85%増の4億1530万ドルとなった。また、今も続くコロナ禍によって、展開に遅れが生じている。

楽天モバイルの山田善久社長は、「楽天モバイルの4Gネットワークの人口カバー率は6月時点で90%を超えています。パンデミックのために半導体が不足しており、当初今夏の達成を目指していた人口カバー率96%という目標は、年内に達成できる見込みです」と話している。

この目標を達成するために必要となる基地局サイトはすべて契約済みだという。楽天では、2021年までは赤字が続き、2022年には少し横ばいになった後、2023年に黒字化すると予想している。

※訳注:文中の各氏によるコメント内容は英語からの翻訳です。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/rakuten-gazes-150b-global-open-ran-play/2021/08/

Matt Kapko
Matt Kapko Senior Editor

Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

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